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2010.9.18 【陽】
Novel stage / original
《Oenanthe No.10》
「これからどうなっちゃうのかしら……」
少女は自室の寝台の上で膝を抱えて呟いた。
霧を抜けてきた王子様を村へ連れてきた時の皆、特に彼女の親世代以上の反応は異様な程激しく殺気立っていた。その敵意は彼らを連れて来た少女にも一部向けられ、一夜明けた今となっても部屋から出られないでいる。
親すら近付かない部屋にいるのは小さな光の球くらいだ。
「だから言ったじゃないかナンシィ」
幼い子供の声は非常に怒っていた。
「外の人なんて入れちゃ駄目だったんだよ」
「でも……」
胸の中で渦巻くいくつもの言葉を言えないでいる少女に、光球は更に言いつのる。
「太陽祭だって近付いているのに」
ぶつぶつとまだ愚痴を言い足りない様子が見える。
「……ねぇ、セリ」
頭の少し上を飛ぶ未だに怒っている光へ、少女は意を決して声をかけた。表情はどこか悲しげな雰囲気を漂わせている。
「私達、どうしてこうやって閉じこもっているのかな」
「何言ってるんだよ!」
低い天井の下で光がぶんぶん細かく飛び回る。
「あいつらが君達をここへ追いやったんだよ! 君達はただ平和に暮らしていたかっただけなのに! あいつらはただ自分達の別荘地を作るためだけに君達を社会的に抹殺したんだ!」
「でも……それはもう三十年近く前のことなのよ」
少女は叫ぶように言う。何故光の球がこんなにも怒っているのか、何故皆が外の者を拒むのかがわからないがゆえの悲しみ。けれど、光の球は叫び返す。
「たった三十年しか経ってないんだよ!」
少女はこの土地で生まれた。
物心ついたときには霧の森にいることが当たり前。自然の恵みと共に生きて、厳しい時には悲しみを大地と分かち合う生活をずっと続けてきた。
光の球もこの土地で生まれた。
声とは裏腹に長い時を生きてきた彼は嘆きを知っている。彼女達の親が、村の人が、先祖から丹精かけて育ててきた土地を奪われた慟哭や恨みの声を。
「あいつらは自分の事しか考えてないんだ! また何か無茶を突きつけに来たに決まってる!」
「そんなのわからないわ。いつまでも過去の因縁を引き摺っていたら、全てが敵になってしまうのに」
彼はよくわからない言葉を沢山使うが、その微笑みも仕草もあくまで優しい。悪い人ではないのだ。
少女は村の人と訪れた王子様に仲良くして欲しかった。
けれど、皆と同じように光の球は嘆く。
「ナンシィ、君の優しいところが僕は大好きだよ。でもお願いだ。警戒心はちゃんと持っていて」
「セリ……」
彼を含めて、村の人々はどこまでも頑なで、因縁も何も知らない少女はただ嘆くしかなかった。
Fine.