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2010.9.23 【秋】
Novel stage / original:Absoetia
《秋の気配》
アブソエティア国王城。
厳重な兵士達の見張りを掻い潜って、大小二つの影が日中堂々と堅牢な外壁の内側へと潜り込んだ。
片方は筋骨隆々ではないがそれなりの体格、もう片方はそれより小さいほっそりとした体格だ。こそこそと潜り戸を抜ける姿は警戒を怠らないがかなり手馴れている。
内側へと続く潜り戸を細く開けると、二つの目がきょろきょろと左右を見回す。
中には秋風にそよぐ草花と噴水があるだけで人影はない。城壁の上には見張りの目があるため、巡回パターンを読み取る。
直線は左右を確認しつつ真っ直ぐ歩き、角で回れ右。正面の巨大な門の扉の継ぎ目上で二人の兵士が交差する。間隔は必ず一定の間隔を保って繰り返される流れ。
タイミングを見計らい、角で方向転換をする瞬間に飛び出して兵士の死角へ入る。戸もきちんと音を立てずに閉めてある。
思惑通り兵士達は気付かない。
人影は顔を合わせてサムズアップ。そのまま王宮内へと入ろうとした瞬間だった。
ひゅうっと鋭い風が一瞬だけ吹いた。
気まぐれな風は勢いよく人影たちの背を撫でる。それぞれの肩に負っていた大きな皮袋を浚って。
「!?」
声を出さずに驚きの表情を交し合う人影二つ。咄嗟に戸のない勝手口に潜り込んだはいいが、きょろきょろと城壁の上を窺う。
見回りの兵士には相変わらず気付かれた気配がない。そもそも気付いたとしても人影の袋を奪うには距離がありすぎる。
視線の先が城壁に沿って動き……やがて、二つの姿を捉えた。
この国の宰相を務める青年と側に立つ日除けのヴェールを被った少し低い人影。その目線ははっきりと侵入者を捕らえていて、それぞれひとつずつ大きな皮袋を抱えている。
しかし二つの人影は咎めることもなく微笑ましい視線で侵入者達の視線を受け止める。そして、青年の指先が城のある窓を指差した。
思わず人影たちの視線が窓へと移る。
再び視線を城壁の上に戻した時、青年達の姿は消えていた。
「……これ、行かないとまずいよな」
「お仕置き確定になると思うわ……」
侵入者達は冷や汗を流しながら粛々と城の中へと入っていった。
「それで、第一王女と護衛がそろって秋の味覚狩りですか」
「こっそり城の抜け道まで試していただいて感謝の言葉もありません」
笑顔の宰相と無表情の第一王子つきの青年。
指定された部屋へ行った二人は部屋の空気がブリザードでも起こったかのように下がったのを実感したという。
もっとも、押収された食料はきっちり夕餉の席で饗されたという。
Fine.