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2010.9.16 【本】
Novel stage / original:Willwart
《仲良し?》
「資料集め?」
ギルフォードは出かける間際、フォレスターが肩を回しながら呟いた一言を聞きとがめた。それは面倒なことがあると相手の都合を無視して自分の仕事に付き合わせる癖がある兄に対して自然と身についた感覚だ。
もっとも、そんなことはちっとも気にしない兄はいつものつかめない笑顔でコーヒーを啜っている。
「そう。一週間後のカンファレンスの補助資料をね」
「……俺は手伝わないぞ。用事があるからな」
言いながら、黒翼族の青年は大き目のショルダーバッグに軽食を詰め込んで玄関から飛び出した。
「まあまあそう言わず……おや、もう行ってしまったのか」
本を読みながら答えていたフォレスターは、顔を上げてようやく弟がいないことに気付いた。
カンファレンスの資料集め、となれば当然の如く本や書類を大量に必要とする。運搬役の一人や二人欲しいところだが、一番のあては今逃げ出したばかりだ。
「……ふむ」
カップを置いた男性は軽く手を顎に置いて思案すると、ひとつ頷く。
「仕方がないから出向くとしよう」
背の黒く大きな羽が広がると大きく羽ばたいた。白衣に包まれた体が浮き上がり、青い空へと消えていく。
テーブルに残された医学書のページがぱらぱらと巻き上がった。
夕方。
「ただい、ま」
酷く疲れた様子で戻ってきたギルフォードが見たのは、鼻歌を歌いながら書類を纏め上げる白衣を着た黒翼族の男性と本の山に上半身を持たれかけさせてぐったりしている白翼族の友人の姿だった。
「おや、ギルフォードおかえり」
「あ、ああ……アレク、大丈夫か?」
えらく楽しそうなフォレスターを放置して、青年は友人の様子を見る。議会直属の護衛として普段みっちり鍛えているアレックスですらここまで疲労困憊に追い込むとは……一体どれほどこき使ったのだろう。
「俺は、なんでこんなところにいるんだ……」
青い瞳に映る空が酷く曇って見える。どうやら精神的にも追い詰められているようだ。
「……やりすぎだろ、兄貴」
「仕方ないだろう。他に丁度いい研究員もいなかったし、お前もいなかったし」
平然と言葉を返すと、とんとん、と書類を揃えると封筒にしまう。
「大丈夫だよ。これでもアレクは私と仲良しだからね」
その封筒を机の棚の中へ放り込むとフォレスターはぐったりと突っ伏すアレックスへ肩を貸して起き上がらせる。
「こんなところで寝ていたら風邪を引くから寝かせてくるよ。そうそう、夕飯を作る暇がなかったから何か用意しておいておくれ」
勝手にそれだけ言い置くと羽が大きく動き、二人の身体が宙へと浮かび上がる。
ただ見送るしかなかったギルフォードは暫し動けずにいたが。
「……すまない。アレク」
気に入られた友人の不運へ心の中でそっと涙を流した。
Fine.