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2010.9.11 【担】
Novel stage / Fun Fiction:ととモノ。
《秘密》
鐘が鳴り響く朝。慌てて玄関へ飛び込んだ二つの影があった。
肩に掛けたトートバッグだけではなく大きな包みを抱える白い翼を広げたセレスティアの少女と彼女の荷物を支えながら後ろを走っていた同じセレスティアの少年。
「あ、危なかったのです~」
「ええ、二重の意味で危なかったですね」
荷物を落とさないよう気をつけながら大きく息をつくマリーチ。種族的には体力で劣るセレスティアだが、伊達に戦術系学科にいるわけではなくサフィエルは息ひとつ切らす気配はない。
しかし何とか遅刻は免れたものの、早く行かなければ今度は始業のチャイムが鳴ってしまう。
「さあ、行きましょう」
少年が少女を促す。彼女が持っていた大きな荷物はいつの間にか彼の手の上に置かれている。
「ま、待ってください~」
早くなった息を整えようと壁に手を突いていたマリーチが慌てて追いかける。
ゆっくり歩いていた少年に並ぶのはそれ程かからなかった。けれど、追いついても彼は包みを抱えたままだ。
「あのっ、私がちゃんとお届けいたしますよ~」
「急がないと間に合いませんし、重くもないのです。任せていただけませんか?」
わたわたと追いかけてきた少女へ、少年は平然と答える。
そして微笑を浮かべた。
「大したことではないから、偶には頼ってくれないか」
どこか困った、というよりは戸惑ったような色を含んだ微笑に、少女は少し躊躇った後、こくんと頷いた。
「はい。わかりました……ありがとう。お兄ちゃん」
少女は空いた両手の指先を胸の前で合わせてはにかんだ笑みを浮かべた。
始業のチャイムもぎりぎりになりながらではあるが何とか間に合い、無事に担任の先生から今日の伝達事項を聞き止める。
「さて、こんなとこだ。今日も一日頑張れよ」
必要事項を伝え終えたユーノが教室を出て行く。扉を閉める間際にそっとマリーチの方へ視線を向けた。
少女は小さく頷くと、机の側に置いた大きな包みからもう少し小さい四角い包みを取り出して後を追った。
教室から出てきょろきょろと周りを見回すと、扉から少し離れたところに担任の教師が待っていた。
「先生、頼まれたものです~」
「ああ、ありがとう、マリーチ。どうも私はこういうのが苦手でな……」
依頼として出すには気恥ずかしい、と小さな包みをユーノは照れながら受け取る。
「いえ。私もお世話になっている方ですし、楽しかったのです~」
「そう言ってもらえると嬉しい。本当に助かったよ」
まだ照れたまま手を上げて担任教師は職員室へと戻っていった。
もうすぐ授業開始のチャイムが鳴り始める。
慌てて戻ったセレスティアの少女に隣の席の少女が話しかけた。
「ね、どうかしたの?」
興味津々なエルフの友人にマリーチは大きな包みから更に別の小さな包みを取り出して渡した。
「最近練習しているのです~。よかったら貰っていただけませんか~?」
「え、なんだろ。開けてもいいの?」
「はいです~」
リデルが勧められて包みを開ける。中に入っていたのは通気性のよい素材で編み上げられたメイグリーンのサマーマフラー。止める為のバンドもついていて、そちらは向日葵のような明るい黄色だった。
「わ、すごい。上手だね」
「そんな、まだまだ初心者なのです~」
「趣味でこれだけ出来たら十分だよ」
嬉しそうにエルフの少女が回る頭上で、チャイムが鳴り響く……。
Fine.