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2010.9.12 【無】
Novel stage / Fun Fiction:LοV
《不会無》
小さな炎に照らされた黒のホールでは群がっていた悪魔や骸骨達が声なき動揺をあらわにする。そのなかには姿すら消え行くものもあった。
「やった……かの?」
細かな黒い塵を眺めながら神が呆然と呟く。力ない手が黒い軍配を取り落とした。
隣では暗殺者の少女もどこか気の抜けた様子で佇んでいる。ただ癖なのか、周囲への警戒は続けている。
あまりにも、あっけない。
彼らの戸惑いを具現化するようにシャーマンの少女が注意を発した。
「……多分、まだです」
彼女を含めた断罪の天使の撃破時にいた彼女は知っている。
もし本当に蝿の女王が、この地のロードが滅びたとしたら、起こるはずの現象があるのだ。
アルカナの継承、という。
シャーマンだけではない。ヒルデガルドやオークオラクル、知っている者達は視線を人間のロードへと向ける。
血の跡ひとつなくなった刀を携えた青年は鬼気迫る表情が嘘のように抜けていて、アルカナの輝きを宿す視線はふらふらと宙を彷徨っていた。
ぎぃっ。
小さな足で階段を上ってきた小悪魔がぴょん、と青年の肩に乗った。大きな目がきょろきょろと同じように周囲を見回すと小さく首を傾げる。
ぎっ?
グレムリンには何も見つからなかったようだ。
普段なら青年が反応して頭のひとつも撫でてやるのだろうが彼の手は動かない。
瞬間。
ルヴニールは後方へ床を蹴った。黒いコートの裏地の赤が揺らぐ炎に照らされて鮮やかに翻る。
長身とは思えないほど軽やかな身体は半回転しつつ玉座への階段を全て飛び越え着地。案内されて入ってきたホールの入口へと走り込むと刀を大きく薙いだ。
ばらばらに空気へと散らばっていた塵。
溶けて消えるかと思われた欠片は今、青年の目の前で刀を受けて止めていた。
「ほほほ……」
あの笑い声が再び響き渡る。ざわざわと蠢く黒い塊は次第に蝿と女性が融合したような姿へと形を作っていく。
「力を辿ったか、それとも単なる勘か。なかなかに早い動きよの」
ぎぃ……。
目の前で女王の微笑を見た小悪魔が怯えた声を出す。青年が後方へ宙返りをした時にきちんとグレムリンはバックラーを持つ手に受け止められていた為、今はまた彼の肩にしがみついている。
ルヴニールは未だに無言のまま。刀は錫杖に受け止められつつ着実に押し、紅い瞳に再び強い光が宿り始めている。
「じゃが」
発せられる怒りの気配を感じた蝿の女王は口の端を吊り上げる。
「何故、ここなのか。意味はわかっておるのかの?」
それは悪意の篭った赤い三日月。
ぱちん、と指を鳴らす音。
びちゃり、と大量の血液が床へばらまかれる音。
ばちゃ、と質量のあるものが液体が溜まった場所へと落ちる音。
ロードの身の内に宿る紅い石が力を分け与えたものの喪失を告げた。
To be continued...