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2010.9.17 【痒】
Novel stage / original:Two Little Stars
《ひっかく》
朝。
目を覚ますとネコの仔達が泣き喚いていた。
「うるさいな……」
博は頭を軽く振って布団から起き上がった。寝巻き代わりの作務衣の解けかかった紐を結び直して、騒ぎの元凶の部屋へと向かった。
「なんだ朝っぱらから」
すぱん、と襖を大きく開いた途端、双子は左右から青年へ飛びついた。
「かゆいにゃ~っ!?」
「かゆいのにゃ~っ!?」
涙目で訴えるその手は直に青年から離れ、自身の腕や肩を引っかいている。どうやら虫に刺されたらしい。
「……だからちゃんと襖閉めとけって言っただろ」
襖には市販の虫がこなくなるスプレーを散布してあるのできちんと閉めていればそうそう刺されることはない。しかし、見てみると暑かったせいか庭側の襖はしっかりあいている。
「でも暑いのにゃ!」
「風がないのにゃ!」
「でもいま痒い目にあってるんだろうが。掻くなよ」
「にゃ~っ!」
「無理にゃ~っ!」
双子の引っかいている手をなんとか押えながら青年は食堂の方へと押していった。ネコの仔達の力は強く爪が尖っている為、放置していると腕が血塗れになってしまう。
抵抗するネコの仔を押えるのはかなり厳しいが、数度逃げられる程度で済む。
「薬出してやるから、そこ座れ」
青年が指示するととりあえず大人しく座る。ぎゅっと小さな手を握って耐えてはいるもののそう長くは持たなさそうだ。
「うーっ」
「にーっ」
歯を食いしばって耐える姿はこんな時にはこっけいなほど真剣。
思わず笑いかける光景を横目に、博は棚から救急箱を取り出すと塗るタイプの薬を出してやる。
「ほら、腕出せ」
「にゃ」
まずアンテールに声をかける。
真っ直ぐ伸びた腕に視線を走らせると、白い肌にぽちっとほんのりピンク色の点があった。だが引っかいたせいでその点を通過する赤い筋が何本も走っていた。かろうじてまだ血は出ていない。
「少ししみるかもしれんぞ」
スティックノリのように直接患部に塗りつける。
「……にゃっ!?」
ぴん、と耳や尻尾が逆立った。引っかいた他の部分にも薬がしみたのだろう。もちろんそれを危惧したからこそ先にアンテールに声をかけた。
「あ、アンテール、大丈夫かにゃ?」
「ね、ネコは大丈夫にゃ~……」
「痒みは引いただろう。ほら、ステラも腕出せ」
「にゃ、にゃ~っ」
おずおずとステラも腕を出した。ステラの方が年上気質なので、アンテールが我慢したとあれば自分が我慢しないわけにはいかないという自尊心が働いたのだ。
「ほら、もう掻くなよ」
気がつくと双子の扱いに慣れてきている自分を自覚することなく、博は手早く薬を塗りつける。
結局その晩から、双子達の部屋には蚊帳が吊るされることになったという。
Fine.