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2010.8.23 【絞】
Novel stage / original:Two Little Stars
《てぬぐい》
「ミユウ、それなんにゃ?」
「雑巾とは違うにゃ?」
にゃあにゃあネコの仔達に纏わりつかれながら、美優はステラとアンテールの頭に豆絞りの手ぬぐいを被せる。上手くネコの耳が目立たないように、バンダナで頭を半円状に覆うような形だ。
「これは豆絞りって言うのよ。お祭の時にみかける、てぬぐいみたいなものね」
言いながら彼女は服も着替えさせていく。以前待ち時間に双子へお揃いで買った紺の縞柄の甚平だ。
普段見ない服だけに、ネコの仔達は大人しく着せられている。
まるで母親が子供達の服装を整えているような光景を見ながら、博は複雑な顔をしていた。
「……本当に行くのか?」
「当たり前ですよ」
青年の困った表情とは正反対に彼女はまったく揺るがない笑顔を見せる。そして彼へ駄目押しをするためか、ネコの仔達へ尋ねた。
「折角お祭やってるんだもの、ネコちゃん達だって見たいわよね」
「おまつり?」
「おまつりにゃ?」
双子は絵本で読んだことはある。けれど実際に行った事はないようで顔を見合わせていた。二対の瞳に映るのは好奇心。
「そうよ。夜だけど明かりがきらきらいろんな色があって、ゲームや食べ物の出店もでてるの」
「きらきらにゃ!」
「食べ物にゃ!」
「人も沢山いるんだがな……」
ネコの仔達が目を輝かせるものばかり並べる美優の甘い口実に、元々好奇心でいっぱいだった双子は博の言葉も耳に入らないほどすっかり乗り気だ。
「ほら」
「……せこいぞ」
博は苦笑した。双子を両脇に従えて意気揚々と伊藤家を出て行く姿は、飴で子供を釣る誘拐犯と手口が大差ない。
確かに青年は言った。
美優が祭に双子達を連れて行きたいといった時、ネコの仔達が行きたがったら美優と博が引率して連れて行ってもいいと。
ネコの仔達は子供らしく好奇心も旺盛だが相応の臆病なところもある。派手な場所は興味を引くが避けるだろうという思惑は見事に外れたわけだ。
「やれやれ、仕方ないな」
呟きながら、青年は小さな二つの箱を紙袋から取り出した。中にはそれぞれころんとまるい紅と黒の巾着が一つずつ。麻布の上でぴょんと跳ねる雪うさぎが濃い地の色に輪郭を際立たせている。
セットになっている同色の布の財布へ小銭を振り分けると巾着の中へ入れた。
「たまに、だけだからな」
自分へ言い聞かせるように呟くと、博は二つの小さな巾着を手に外へ向かう。
愛車の側で待っている三人のもとへ。
Fine.