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2010.8.20 【高】
Novel stage / original:Two Little Stars
《きのうえ》
夏の日差しが弱まる頃、博は仕事を終えて和室の畳の上に寝転がっていた。
ネコの仔達は外へ遊びに行っているため家は非常に静かだ。時折吹き込む優しい風と陽気に意識はまどろむばかり。
うつらうつらと午睡に入ろうとしていたときだった。
「ヒロシ、ヒロシ、どこなのにゃ! 大変にゃ! 大変なのにゃ~!」
泣きべそをかきながらにゃあにゃあ叫ぶ声が響いた。
双子は姿も声もよく似ているが性格の違いと言うものは出てくる。ステラは元気なおしゃまさん、アンテールは大人しくおっとりさん。どちらも好奇心がいっぱいなのは変わらないが。
駆けて来る方に検討をつけた博が目を擦りながら縁側へ出る。泣き出したアンテールはあやしたほうが泣き止むのが早い。
「どうした」
「ヒロシ~!」
ネコの仔の片割れは青年にしっかりとしがみついた。どのくらい泣き続けたのだろうか目が真っ赤に張れている。
「大変なのにゃ! ステラが、ステラがっ!」
あまりの必死さに博の顔色が変わる。
(ひょっとして、こいつらを連れ戻しに来たか?)
不安にかられながら青年はアンテールの次の言葉を待った。
「ステラが、木から下りられなくなったのにゃ!」
「……はい?」
にゃあにゃあ叫ぶ内容から理由を汲み取った青年は思わず腰を落とした。
「そ、そうか、木から下りられなくなった、ね」
博の様子の変化を理解しきれないまま、アンテールは青年のシャツにしがみついて泣いている。
「枝が高いにゃ! 跳べないにゃ!」
「わ、わかった。わかったから、落ち着け」
呆然としている間にシャツが破けそうになり、慌てて引っ張る手を止める。ぼろぼろ涙が零れる頬を拭ってやると、ついた土をはたきながら立ち上がった。
「でも、でもステラがー!」
「ああ。今梯子を取ってくるから、それから案内しろ」
「うー」
ぎゅっと左足にしがみついてくるのに閉口しつつ、結局張り付かせたまま博は納屋へと向かった。
「ステラ! ステラ!」
「アンテール、助けてにゃ~っ!」
伊藤家の裏山、樹齢三桁にのりそうな木の上。
地上からは葉が生い茂っていてまったく見えないが、ネコの仔達がにゃあにゃあ言っているので間違いはないだろう。
「ネコ怖いにゃ~!」
まるでアンテールが飛び込んできたときのような鳴き声が聞こえてくる。
「ステラ、ヒロシきたにゃ!」
「落ち着けステラ」
声をかけた途端、降って来る声が喜色一色へ染まる。
「ヒロシ! ヒロシにゃ!」
直後にがさがさと草の音。喜んだ弾みで動いているらしい。枝の太さはわからないが、あまりにも動き出せば枝が折れるかもしれない。
「今降ろしてやるから、大人しくしてろ」
「わ、わかったにゃ」
返事と共にひとまず動きが止まった。
青年は持ってきた梯子を幹へとかけ、地面との接地を確認する。上手いこと梯子が安定するだけの地面を見つけることができた。
「アンテール、押えててくれ」
「はいにゃ!」
一応アンテールに押えさせて、博はゆっくりと木の上へと昇っていった。枝と幹の境目に靴痕が残っており、いい目印になっている。
大体十分くらいも昇った頃だろうか、髪をまとめているピンクのリボンが葉っぱの間に見えた。
「ステラ!」
声をかけるとリボンが見えなくなり、代わりにくりくり大きな猫目が見えた。
「にゃっ!」
「うぉあっ!?」
嬉しそうなネコの仔がいた。見つけた瞬間に博へ飛びついてきたが、一応予想していたものの流石にネコの仔を支えるのには苦労した。
「ヒロシにゃ~」
「……ああもう、そのまましがみついてろ」
青年は注意しようと思っていた。だがあまりに安堵した様子を見て、結局溜息一つだけついて再び地上へと戻る。
もちろん、帰ってからしっかり叱った。
Fine.