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2010.8.15 【桜】
Novel stage / original:absoetia
《桜の木の下で》
街の中心にある広く賑やかな公園とは違う、郊外の公園。
さして手入れがされているわけではなく低い囲いで囲ってあるだけ、と言っても過言ではない。
しかし、ここは街中ではない場所がある。
小高い丘の上。
なだらかに広がるライトグリーンの絨毯の上でぽつんと一本だけ、だが他のどんな草木よりも際立つ存在。
他国との同盟記念に送られたキルシュブリューテ。
淡いピンク色の花弁が降る季節。
太い幹へ背を預けて、少年が本を読んでいた。あまり身体の大きくない子供にとって、大樹の根は丁度いい腰掛になっている。
時折、ざあっと風が吹きぬける。
少年は花弁が舞う度に顔を上げた。
花弁より薄い白の髪と肌、花弁より紅い瞳に間の色が補われ、小さな姿はまるで溶けて消えいくように樹とひとつになる。
画家が見ていたら一幅の絵画に描ける光景。
少年がまったく気付かずに読書を続けていると、すっと、文字の羅列に影が落ちた。
「少しずれて頂けますか」
少年は言ってから顔を上げた。目線の先に立つのは彼とさほど歳の変わらない少年。木漏れ日に金の髪が輝いていた。
側に立った少年は言われるがまま頷いて隣に座る。
何か話すでもなく、白の少年は本を読み続け、金の少年は花を見上げていた。
春の長閑な時が流れていき……再び、風が吹いた。
淡いピンク色の風が二人を包み、流れていく。
白の少年は今までと同様、そっと空を見上げた。しかし今までと違い、ぼんやりと見上げていた表情は不思議そうなものだった
捉まれた腕を見て。
「……ラート」
隣に座る少年は無表情のまま、白の少年の二の腕あたりをつかんでいた。痛みを感じるほどではないが、しっかりと。
「すまない」
問われるような目線を向けられると金の少年はあっさりと手を離した。
「お前が消えそうだったからな」
ただ話しただけでは納得しないと見たのか、理由もつけて。
白の少年は答えを聞いて眉を僅かに潜める。
「簡単に消えなくて残念でしたね」
一言返すと、彼はまた本へ目を落とす。
漂う怒りの気配に、金の少年は少し悩んだ後に言葉を紡いだ。
「いや……綺麗だった」
返事はない。
けれど、怒りの雰囲気は少し和らいだように感じられた。
Fine.
※キルシュブリューテ(Kirschblute)…独語で桜の意味。