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2010.8.11 【炎】
Novel stage / Fun Fiction:Fire Emblem 聖戦の系譜
《炎》
少年は強い炎に憧れていた。
聖なる炎の戦士の血を引く家系の末裔として、彼を守ろうとする賢く強い兄を見て。
少年にも聖戦士の資質は継がれているが兄と比べて弱く、また生来の優しい性格もあって、彼の炎は全てを焼き尽くす炎へとなることはなかった。
しかし、幼い少年はわかっていても強い炎を求めた。
少しでも兄の力となる為に。
「あの頃のお前は必死だったよな」
寝台に寝転がりながらレックスは苦笑した。隣の寝台では話の主題にもなっているアゼルがやはり同じような表情をしている。
「ただ強くなりたがってて、無理に手合わせとかもやったもんだ」
「そうだったね」
過去を思い出す視線の先でかつての幼い友と今の友が重なる。
炎の聖戦士の系譜たる炎の色の髪と瞳も、どこか頼りなさそうな風情も幼い頃とあまり変わりはない。だが、皮肉なことに優しさ故に戦いへと身を投じ、戦い続けることで着実に力を付けつつある。
「でも、結局諦めてたな。なんかきっかけでもあったのか?」
この友人が見た目よりもきかないのは戦場に来てしまったことでも実証済みだ。
「うん」
問を向けられたアゼルは俯き気味にファイアーの魔道書を手にとって応えた。
「僕が焦りすぎて睡眠時間も削って書庫に篭ったりしてたから、兄上に止められたんだ」
『今、無理に背伸びをする必要はない。焦らずとも成長と共に魔力も育つのだから。それに……』
厳しい顔をしていた兄が理由を聞いて返した言葉。叩かれると思って反射的にすくんだ弟へ、諭すように頭を撫でた時が思い出される。
「それから僕は焦ることをやめたんだ」
「アルヴィス卿、か……あの人は本当にお前が大切なんだな」
天井を見上げてレックスは呟いた。それぞれが抱く感情の差があるとはいえ、父親達とアゼルの話すアルヴィス像にはかなりの隔たりがある。特に後者が語る側面はほぼ彼からしか得ることの出来ない一面だ。
同じ炎の血を引く異母兄弟。お互いへ向ける思いはどこかちぐはぐだが、中心には違えようのない思いがある。無条件の親愛が。
「……本当によかったのか?」
大切な異母兄に反対してまで戦場へ来て。
言葉の裏に隠された意図を読み取ってアゼルは応えた。
「このまま、ずっと隠れているのは嫌だったんだ」
『焼き尽くす炎は私だけで十分だ。お前は私を温める優しい炎であってくれ』
続いた言葉もまた、思い出していた。
Fine.