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2010.8.6 【捨】
Novel stage / original:Two Little Stars
《すてねこ》
「ネコちゃん達は元気みたいですねー」
「元気すぎるくらいだ」
原稿を取りに来た、という建前で双子の様子を見に来た美優は、揃ってお昼寝中という微笑ましい光景に和みながら応接間で博と話していた。
「そういえば先生」
氷の入った麦茶を飲みながら、彼女は口を開く。
「ステラちゃんとアンテールちゃんを拾ったのって、どの辺でしたっけ?」
話題から考えると唐突とも思える発言だが、気にすることなく博は問に答えた。
「出版社からの帰り道だから……五丁目の裏路地だ。ゴミステーションの近く」
「本当に近くなんですねー……でもですよ?」
彼女は持っていたボールペンをぴこぴこと動かす。
「ネコなんて貴重で珍しいのに、誰かが捨てた、はともかくとして、売ったとかなくしたという噂すら聞こえてこないんです」
どんなに隠していても噂と言うのものは広がる。ましてや珍しい物に関してならなおさらだ。
ただでさえ情報を集めるのが得意な美優が、更にその人脈を生かしてもまったく捉えることのできない話。
「なんかおかしいですよ。これ」
「……そうかもしれない」
わからなかったことに誇りが傷つくのか少し怒りながらいった担当者へ博は呟く。
「ねえ。このまま先生がネコちゃん達と暮らした方がいいんじゃないですか?」
美優は饅頭を飲み込んでそう言う。だが。
「それでは双子は表舞台には出られない」
きっぱりと青年は告げた。
「それはそうですけど……」
不満そうな彼女へ博は言葉を重ねる。
「ステラとアンテールが何かしたがったときに、全ての可能性を残してやりたいんだ。面倒なたった紙切れ一枚でしかないが、あるにこしたことはない」
元の持ち主を見つけて、返すなり譲渡なりをさせる。何の手がかりもないが、それをするかしないかでネコの仔達の自由度は大きく変わるのだ。
「引き続き手間をかけさせますが……」
「やだ、水臭いですよ先生。私もネコちゃん達には幸せになって欲しいですし」
頭を下げた博を慌てて止めた美優がぱたぱたと手を振った。
そして原稿をしまった封筒を抱えながら立ち上がると、帰る素振りを見せる。
「ただ」
しかし、最後に彼女は付け加えた。
「……先生は、ネコちゃん達と、別れられますか?」
美優の姿が見えなくなっても、青年の頭にその問いは残り続けた。
Fine.