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2010.8.8 【田】
Novel stage / original:Abyss of Time
《L-y-c-o-r-i-s》
それは、僕が目覚めてから二年経った日の事だった。
「すずなくんと組んでから、何時の間にかこんなに経ってたのね」
心さんが空を眺めながらしみじみと言った。
僕と心さんが正式にイレイサーを退治するコンビとして組んだのは、僕が目を覚まし、動作チェックを終えてからなので動き始めてから半年ほど後のことだ。よって、心さんとは一年半ほど組んでいることになる。
「はい」
「気がついてみればあっという間だわ。もっとも、年齢のかわらない私達に年月はあまり意味がないけれど……」
そう言いながら、歩く心さんはどこか嬉しそうな表情をしていた。
「何かいいことがありましたか?」
僕が尋ねると一瞬虚をつかれたような顔をするが、すぐに微笑を浮かべる。
「そうね……いいことだわ。すずなくんももう独り立ちできそうなくらい強くなったし」
いくら予め知識を持っていても、実際の駆動や立ち振る舞いなどはやってみなければわからない。そのため僕は紫さんや心さんと組んで、多くのことに挑戦していた。
稼動直後に比べれば、確かに強くなったとも言える。判断がつけやすくなったと言い換えてもいい。
「ありがとうございます」
感謝を込めて、僕は心さんへ頭を下げた。
「ううん。いいの、よ……」
心さんの言葉が途中で止まる。
頭を上げると、心さんは一点を見て固まっていた。
心さんの働いているアルバイトのお店の前から伸びる道。その先にいる二十代半ばと見られる女性へと目線は続いている。
腰まで伸びる柔らかな金色の髪。
澄んだエメラルドの瞳。
日に焼けたことがないであろう白い肌に、膝下までの橙色のサンドレスがよく似合っている。
女性は僕と目が合うと、白く大きなつばが広がる帽子を押えながらにこっと笑った。
「リコリスの狂い咲く田園で、また会いましょう。可愛い子供達」
そう言うと、女性は振り返って人ごみの中へと紛れていく。
僕は慌てて追いかけるがとても紛れきれる美貌ではないにもかかわらず、その姿を追うことはできなかった。
周りの人に聞いても誰も覚えてはいなかったのだ。
「ごめんなさい、心さん。見失って……心さん?」
一通り回って戻ってきても、心さんの顔色は悪いままだった。
「どうかしたんですか?」
「い、いえ……なんでも、ないの」
そう答えたきり、心さんは口を噤み、それ以降この話に触れる事はなかった。
Fine.