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2010.8.1 【父】
Novel stage / Fun Fiction:FE 聖戦の系譜
《継がれる炎》 ※Arthur(Fala)
ダーナ城を開放して、無事に妹を見つけた日の夜。
それぞれが再会した者もいたせいか、皆が気を使ったため兄妹は落ち着いて話すことができた。
陽がだんだん沈んでいき、砂漠が茜色に染まる……。
「赤いな」
バルコニーから身を乗り出したアーサーが眼下に広がる赤を眺めていた。
「燃えるような赤……」
その隣に立つティニーもまた、その赤に見とれている。
例え砂漠の暮らしに慣れていたとしても、陽は毎日違う。この日はたまたま赤の発色が非常に強かった。
すると、唐突に彼女は口を開いた。
「兄様は……父様のことを、覚えていらっしゃいますか?」
それは酷く言いにくそうな言い方だった。
もちろんティニーも父親がどこにいて何をしているのか、そもそも生きてすらいるのかどうか知らない。
ただ、彼女は母親から人となりや容姿などを聞いていた。もっとも、長期間会えないことで多少美化はされていたかもしれない。
しかし。
「……いや」
彼は首を横に振った。
物心ついたときには母親も妹もさらわれてシレジアにただ一人残っていたアーサー。例えほんの赤ん坊の頃に会っていたとしても、記憶として残っていない。
皮肉なことに、為政者で父親の異母兄弟でもあるアルヴィス皇帝の姿の方が知っているくらいだ。
バーハラで、シレジアで。その姿は多くの者に見られている。
「そう、ですか……」
予想通りの答えにティニーは俯く。
その反応を父親のことを聞きたがったのだと受け取ったアーサーは、少女の頭を優しく撫でた。
「悪いな。話してやれなくて」
あくまで気遣う兄の様子に、少女は泣きそうになりながら首を横に振った。
「いえ……その、母様が、言ってたんです」
不思議そうな視線を受けながら、彼女は赤く染まる砂漠を見て言った。
「父様は燃えるような赤い髪と瞳で、気が弱いけど一途で……シグルド様と行動を共にしながら、最後までご自分の兄様のことを信じてらしたのだそうです」
「……そうか」
アーサーはティニーの頭の上から手を下ろすと、その目線を遠くへ漂わせる。
茜色は大地だけでなく空も強い朱に染めていく。
黙りこくった兄に、もっと泣きそうになっている妹がその袖をぎゅっと握り締めて訴える。
「あの、気に触ったのなら、ごめんなさい」
アーサーが視線を戻すと、今にも涙が零れそうな瞳がじっと見上げている。
「いや、そうじゃない」
少し慌てて彼は言葉を繋げた。
「まだあまり実感は湧かないけど……よかったら、また今度父様の話を聞かせてくれ」
「は、はい」
漸く微笑んだティニーを見ながら、アーサーは見入っていた茜色の砂漠を思い浮かべる。
赤は炎の、そして情熱の色。
全てを燃えつくしながら、自身も焼かれる、激しい一面を持つ色。
(戦いは、まだ終わっていない。父さんが最後まで信じたのなら、その結果を見守るのも悪くないな)
やがて、茜は黒に、そして小さな多くの輝きへと取って代わられる……。
Fine.