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2010.7.31 【狭】
Novel stage / original
《Oenanthe No.5》
自由……自由って、なんだろう?
お父さんやお母さんがいて、村全体の仲がよくて。
森も川も、食べるのに困らないくらい沢山の恵みをくれる。
時折病人や怪我人が出ても、大地のくれる薬草や実が薬になる。
変わらない穏やかな毎日。
確かに狭い世界かもしれない。
つまらない世界という人もいるかもしれない。
けれど、広い世界は、自由というものは。
この幸せを捨ててまで、掴むべきものなのだろうか。
「……ナンシィ」
呆然としていた少女の目の前には、きらきらと輝く光の球が浮かんでいた。
「な、なあに。セリ」
呼びかけに少女は応えた。どう見ても慌てて。
「あいつの言うこと、気にしてるの?」
幼い少年の声にはどこか心配そうな気配が漏れている。
「駄目だよ。外の人間の言うことなんて聞いたら」
もし姿があれば、腕を引っ張ってでも引き止めていただろう。そのくらい、真剣な声色だった。
「ええ……大丈夫」
一つ息を吐くと、彼女はそっと微笑んでみせる。
「外の世界は怖いもの。それに、私にはこの村が一番合ってるしね」
「それならいいけど……」
「本当に大丈夫だから」
少女は何回も頷いて、かごを抱えると村へと戻っていく。一歩進むごとに、ちらついてしまうあの王子様の面影を振りほどきながら。
「私は、今が幸せなの」
そう、自分に言い聞かせていた。
Fine.
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