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2010.7.27 【図】
Novel stage / original:Two Little Stars
《らくがき》
ある日。博は出版社の一室で記者に質問を受けていた。
次回の雑誌に載せる読者の質問に答えようというコーナーを書くためらしい。
「先生、これから小説を書こうとしている方々へアドバイスを下さい」
「そうですね。使い古された言葉ではありますが、沢山情報を取り込んでください。想像の引き出しが増えることが大切です」
今までにも何度かあった企画の為、答える博の方も大分慣れている。
他にもいくつかの質問に答え、大体三十分ほどで用件が終わる。
「じゃ、これで。今回もお世話になりました先生」
「よろしくお願いします」
少々そっけないとも思われる態度で頭を下げると、博は慌てて部屋から出て行った。
その後姿を眺めた記者は咎めるどころか微笑ましい目をして見送る。
「本当におとーさん業が身についてきたなぁ、伊藤先生」
くすくすと笑いながら、レコーダーとメモをまとめ始めた。
「城之崎さん」
「あ、伊藤先生。お疲れ様です」
青年が早足で駆け込んだのは出版社の社員がくつろぐ空間、リフレッシュルーム。
彼はいつもの通り双子を美優へ預けていたのだ。
「ちびちゃん達、今日もちゃんと大人しくしてましたよ」
嬉しそうに博を手招きする彼女は、小さなネコの仔達の面倒を見るのが楽しくて仕方がないらしい。
そして美優が声をかけたことで彼が来たことに気付いたステラとアンテールは、持っていたクレヨンを放り出す勢いで椅子から飛び降りた。
「ヒロシ、おかえりにゃ!」
「飼い主やっときたにゃー!」
ぎゅうぎゅう抱きつく双子を宥めながら、テーブルの上に広げられている二枚の画用紙を見る。
それぞれ一枚ずつとりかかっていた紙には人らしき顔が描かれていた。
「ほら、二人とも。まだやることがあるでしょう?」
美優が悪戯っぽくウィンクすると、珍しく双子が博から離れた。
そしてそれぞれが描いていた絵を手に取ると同時に差し出す。
「はいにゃ! プレゼントにゃ!」
「ネコ達からのサプライズ、にゃ!」
「……は?」
博はぽかん、と呆然の表情を浮かべた。確かに茶髪に黒い目という青年の外見特徴そのままであるし、美優が座っている席、つまり双子の目の前にはいつの間に撮ったのか、美優の携帯に収められている博の写真があった。
ネコの仔達は期待と不安の混じった目で彼を見上げている。
戸惑う青年。
「せーんせっ、ちゃんと受け取ってあげなきゃ」
美優が背中を押すまで、彼は動けなかった。
よろめく様に出た手がネコの仔達の差し出す絵を受け取り、
「……その、ありがとな」
ぎこちなく、硬い声で礼を言った。
するとぱあっと向日葵が咲くような、太陽が輝くような、溢れんばかりの笑顔が二つ、そこには出来上がった。
「ヒロシが喜んでくれたにゃ!」
「プレゼント喜んでくれたにゃ!」
今度こそ双子は力いっぱい博へ抱きついた。
まだ戸惑いを隠せないまま、それでもそっとステラとアンテールの肩に手を置く青年の表情はどこか優しげだ。
こっそりと集団から離れた美優は、リフレッシュルームへ入ってきた先程取材を行っていた記者に耳打ちした。
「おとーさんへの図画工作、大成功です」
「先生は結構ベタなのに弱いようだな。しかし、まさかネコを拾うとはね」
「びっくりですよね。でも相当板についてるんですよ」
「そのようだ」
企みが大成功した二人は忍び笑いを漏らした。
Fine.