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2010.7.8 【菓】
Novel stage / original:Two Little Stars
《お菓子の家》
最近、ネコの仔達は絵本を読むのがお気に入りのようだった。
といっても自分で読むのではなく、博に読んで貰うのがいいらしい。
まだ寂しがり屋なところがあるため、本を読んでもらうというのは格好の口実だったようだ。もっとも、本自体を楽しんでいるということもある。
今日も布団に包まったステラとアンテールに挟まれて、テーブルライトの灯りで絵本を開いている。
「二人は森を歩いていると、やがて……」
「お菓子の家にゃ!」
「クッキーとやあめがいっぱいにゃ!」
続きを読む前に、双子が挿絵を見てはしゃぎ始めた。
そう、今日の絵本はあの有名な童話。魔女の住むお菓子の家が登場するお話だ。
ネコのクローンとはいうものの、どうやら嗜好は子供に近いらしく甘いものは比較的好む。
この家に来るまではあまり食べたことがない、というのもあるのかもしれない。
「おいしそうにゃー」
「お腹いっぱいになりそうにゃー」
話よりもすっかりお菓子の方に夢中になったネコの仔達は、博がページをめくろうとしても止めてしまう。
にゃあにゃあ言いながら舌なめずりでもしそうな勢いだ。
「……お前ら、お菓子の家に連れて行くって行ったらついていきそうだな」
呆れながら双子を見て呟く博。
すると、ステラとアンテールは一瞬きょとん、という表情をした。
そして。
「博が連れて行ってくれるなら、いくにゃよ」
「ネコたちは他の人にはついていかないにゃ」
それぞれ博の左右の腕にぎゅっとしがみついた。
「おいおい……」
青年は両腕を押えられて動けないまま、一つ嘆息した。
「お前ら、元の主がいるんだろうが」
「でもネコたちを買った主はネコたちを捨てたにゃ」
「そうにゃ。拾ったのはヒロシだから、もうヒロシがネコの主にゃ」
甘えるように、双子たちは頬をしがみつく腕に擦り付けた。
「……わかったよ」
甘えが出てくるのはネコの仔達が不安になっている証拠だ。
もちろん、博は双子の飼い主が見つかったら返す気でいる。それはかわらない。
だが、ここで言ってしまえばステラもアンテールも決して彼を離しはしないだろう。
「ほら、もう時間だ。寝ろ」
「ま、まだお話途中にゃー」
「今話してるうちに時間結構すぎてんだよ。明日最初から読み直してやる」
つかまれた腕を抜いて、双子の頭をぽふぽふと叩く。すると少しは安心したのか、大人しく頭を枕の上へとおいた。
「うー。仕方ないにゃー。ヒロシのわがままにゃー」
「どっちがだ」
ついでに余計なことを言ったアンテールの頭を少し小突いて、博は立ち上がった。テーブルの上に絵本を置いてランプを消す。
「おやすみにゃー」
「おやすみにゃー」
違う声でまったく同じ言葉が同時に闇の中から聞こえる。
言葉にはもう不安の色はない。
「ああ、おやすみ」
(まあ、もうすこしは、な)
あっさりと眠りについた双子を背に、青年は心の中で呟いた。
Fine.