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2010.7.4 【売】
Novel stage / Fun Fiction:FF5
《道具屋のある日》
豊かな水に恵まれた国、ウォルス。
水のクリスタルを有するウォルス城、城下街、共に豊富な流れを利用した運河が張り巡らされ、繁栄している。
そんな街角の一角。普通の道具屋。
店の主人である中年の男性は店の準備を終えると看板を外にかける。
近頃は風のクリスタルが砕け散ったという話もあって、街でも不安な空気が流れてはいる。しかし稼がないことには今日の糧も得られない。
だから主人は今日も店を開ける。
客に愛想を振りまいて、品物を売る。遠い未来よりも、近い明日を。
からんからん……。
扉に取り付けられたベルが鳴る。
「いらっしゃい! 何にするかい?」
早速、主人は入ってきた客へ声をかけた。
旅人なのだろう、青年が二人と壮年の男性に若い少女。一見すると不思議な組み合わせだ。
「ああ、ちょっと荷物が増えたから売りたいんだけど、いいかな?」
話し始めたのは短い茶色の青年。もう一人の青年が長い紫色の髪を背中に流す、所謂麗人といった雰囲気とするならば、この青年は簡素にまとめているが要所は革などできっりと止めたいかにも旅人と呼べる雰囲気だった。
発顔だから噂でも怖がってウォルスまで来たんだろう、と推測しながら、道具屋の主人はあくまでにこやかに対応する。
「もちろんさ、何を売りたいんだい?」
「よかった。今出すよ」
青年はほっとした顔で荷物をあさり始める。何故か、彼の後ろで待っている仲間らしき三人は複雑そうな表情だ。
カウンターに積み上げられたのはロッドに剣、ナイフの類もある。
それだけならまったく問題はない。実際、外に出る魔物に立ち向かえる旅人の中には、こうして得た品物を売ってくることが少なくはない。
ただし。
「よし。これで全部」
カウンターに並べられた武器で向こう側にいる青年が見えない。それほどの量だった。
道具屋の主人は旅人達に得体の知れない恐怖を覚えながらも、提示された品物をチェックし数えていく。
各種類が九十本近い武器の山。それでも単価はそれ程はな高くないので、きっちりと数を数えて金額を提示すると嬉しそうに青年が頷いた。
「あ、あと」
言いながらいくつかのアイテムを買い込むと、彼らは去っていった。一人飄々としている青年を除くと、やはり悪いと思うのか壮年の男性や少女が何度も頭を下げていく。
「ま、まいどあり……」
彼らを見送りながら主人は思った。
これもクリスタルが砕けた影響か、と。
ぞっとしない想像を振り切るように、彼はカウンターの武器をしまうべく動き始めた。
Fine.