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2010.7.7    【霊】
 
Novel stage / Fun Fiction:聖剣伝説LοM

《精霊のランプ》




 

 漆黒の闇を穏やかな月の光が包み込む街、ロア。
 アナグマたちが賑わう表通りから少し外れた小路の奥にある一つの店からは、優しい子守唄が聞こえてくる。

 母なる腕が 包んでくれる
 ゆらゆら揺れる 青いゆりかご
 喧嘩ばかりの 魚たちも
 ゆりかご揺れれば 仲良くお休み

 父なる腕が 揺らしてくれる
 ふわふわ包む 青いゆりかご
 楽しいことも 悲しいことも
 思い出にして ゆっくりお休み

 歌っているのは店主の鳥乙女(セイレーン)。背には三対の淡い紫色の花からなる翼がある。
 船乗りたちが忌避しながらも聞き惚れるその歌声も、船から振り落とされない地上では安心して心を任せられる美しい歌声である。
 また、聞き惚れるのは人間だけではない。
 現に、彼女の前にいる水色の髪と魚の尾を持った水の精霊達、ウンディーネは喜んで体を上下に揺すっている。
 歌はまだしばらく続き、そして止まる。
「この歌は気に入っていただけたかしら」
 歌い手からの問いかけに、精霊達は空気を泳ぐようにくるん、と回って応える。もちろん、答えはイエスだ。
「では、お願いね」
 言いながら彼女が取り出したのは、両手の上に載るくらいの籠状の器。頂点には輪がついていて持ち運びができるようになっている。
 数は数個あるが、一つとして同じ形のものはない。ただ球に近い、輪がついているということだけは共通している。
 その中に喜んでいたウンディーネが一人(?)、器の中に入ってくるんと丸くなった。
 すると籠の中心から淡い青を帯びた光が膨らみ、溢れ出し、月とランプしかなかった宵闇を照らす灯りが一つ増える。
 精霊のランプである。
「ありがとう」
 店主が礼を言っている間にも精霊たちは次々と器の中へと飛び込み、淡い青の光のランプが次々と生まれていく。
 最終的に出来たランプの数は七つ。一つ一つ丁寧にバスケットの中へ詰め込みながら、彼女はずっと待っていた青年へ声をかけた。
「エリクさんもありがとう。手伝ってくれて」
「いえ。リュミヌーさんの歌が聞けたのですから、むしろこちらがお礼を言わなくてはいけませんね」
 微笑む彼はずっとセイレーンの後ろで精霊の宿る楽器を鳴らしていたのだ。彼自身が精霊との相性がいいせいか、その楽器の音も精霊達には好まれることが多い。
「あら。どういたしまして」
 微笑み返したリュミヌーはバスケットに大きな布で蓋をすると、青年へと渡した。
「はい。お願いするわ」
「ありがとうございます。行ってきますね」
 以前、とあるきっかけから精霊のランプを売ることがあり、その後も時折請け負うようになったのだ。
 今日もたまたまその日で、来てみればちょうど歌っているところだった為、そっとエリクは楽器を奏で始めた。
 そして今に至る。
 バスケットを抱えて歩いていく青年の後姿を見送りながら、セイレーンの店主はぽつりと呟く。
「それにしてもいい音出すわね……よほど精霊に好かれているのか、それとも存在が近いのかしら」
 その目の前では、仄かに赤い光が穏やかに輝いていた。


 Fine.

 

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