365 letters 2010.7.10 忍者ブログ
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2010.7.10   【昼】

Novel stage / original:Abyss of Time ~ After the Nightmare ~

《白昼》


 


「……まいっちゃったね」
「そうだな」
 今、僕と和がいるのは地球上のどこかではおそらくない。
 ただ晴れわたる空と降り注ぐ強く白い光。終わらない草原が地平線まで続く空間だった。
 イレイサーの作り出す異空間。
 一番多い目的はイレイサーが引き込む対象者にとって心地よい空間を作り出し、逃がさないこと。
 けれど、今回は違った。
 邪魔者になる僕達を閉じ込める為の空間。内側に対して異様なほど強固になっている。
 今回のイレイサーは空間作りを得意とすることを聞いていたため備えはしてきたが、引き戻してもらうには時間がかかる。
 それでも数度脱出を試みた後、僕と和は風にそよぐ草原で座り込んでいた。
 この空間には時間経過の概念がないのか、空から陽の光が消えることは無い。
「どのくらい経ったのかな」
 ぶらぶらと僕は周囲を見回すが、僕と和と草原と空以外に何もない。
「……わからないな」
 和が腕時計を確認してから応える。僕の感覚も働かないことから、壊れたわけではなく、この空間では時計が動かないようだ。
「そっか」
 言いながら僕は座っている位置をずらす。
「何をしている?」
 和がいぶかしむように視線を向けてきたので、僕はにっこり笑ってその肩を掴んで引っ張る。
 後ろに回ってから手元にひきつけたので、必然的に和は僕の膝の上に倒れる。
「おい」
「どうせ紫さんに引き戻してもらうまで何も出来ないしさ。少し休んでおいたほうがいいよ」
 睨みつけてくる和の目を、僕は掌で覆う。
 夜の無いこの世界では物理的に光を遮らなければ、暗闇の安らぎは訪れない。
「それに、引き戻されたらすぐ対決になる。あの子を助けなきゃいけないし」
 当てられた手を外そうと掴んでくる和へ僕は話し続けた。
「だから、今は休んでて」
 すると、和の手が僕の手の上に重なった。
「お前はどうするんだ」
「僕は人造人間だよ。エネルギー供給がつきない限り、疲れてふらつくとかいうことはないんだから」
 笑い声を滲ませながら僕は応える。
 疲れないというのは正確ではないが、少なくとも戦闘等に支障は出ない。思考能力が鈍ることは無いのだ。
 僕は機械だから、というと紫さんも和もあまりいい顔をしない。
 けれど、機械には機械の、人間には人間の長所や短所がある。それだけのことだと僕は思う。
 だから僕は機械としての長所を生かす。
「何かあったらすぐ起こすから、今は寝ててよ。ね、和」
 言葉としての返事は何も返ってこなかった。
 けれど、暫くして。
 静かで整った寝息が膝の上から流れてきた。


 Fine.

 

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