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2010.7.10 【昼】
Novel stage / original:Abyss of Time ~ After the Nightmare ~
《白昼》
「……まいっちゃったね」
「そうだな」
今、僕と和がいるのは地球上のどこかではおそらくない。
ただ晴れわたる空と降り注ぐ強く白い光。終わらない草原が地平線まで続く空間だった。
イレイサーの作り出す異空間。
一番多い目的はイレイサーが引き込む対象者にとって心地よい空間を作り出し、逃がさないこと。
けれど、今回は違った。
邪魔者になる僕達を閉じ込める為の空間。内側に対して異様なほど強固になっている。
今回のイレイサーは空間作りを得意とすることを聞いていたため備えはしてきたが、引き戻してもらうには時間がかかる。
それでも数度脱出を試みた後、僕と和は風にそよぐ草原で座り込んでいた。
この空間には時間経過の概念がないのか、空から陽の光が消えることは無い。
「どのくらい経ったのかな」
ぶらぶらと僕は周囲を見回すが、僕と和と草原と空以外に何もない。
「……わからないな」
和が腕時計を確認してから応える。僕の感覚も働かないことから、壊れたわけではなく、この空間では時計が動かないようだ。
「そっか」
言いながら僕は座っている位置をずらす。
「何をしている?」
和がいぶかしむように視線を向けてきたので、僕はにっこり笑ってその肩を掴んで引っ張る。
後ろに回ってから手元にひきつけたので、必然的に和は僕の膝の上に倒れる。
「おい」
「どうせ紫さんに引き戻してもらうまで何も出来ないしさ。少し休んでおいたほうがいいよ」
睨みつけてくる和の目を、僕は掌で覆う。
夜の無いこの世界では物理的に光を遮らなければ、暗闇の安らぎは訪れない。
「それに、引き戻されたらすぐ対決になる。あの子を助けなきゃいけないし」
当てられた手を外そうと掴んでくる和へ僕は話し続けた。
「だから、今は休んでて」
すると、和の手が僕の手の上に重なった。
「お前はどうするんだ」
「僕は人造人間だよ。エネルギー供給がつきない限り、疲れてふらつくとかいうことはないんだから」
笑い声を滲ませながら僕は応える。
疲れないというのは正確ではないが、少なくとも戦闘等に支障は出ない。思考能力が鈍ることは無いのだ。
僕は機械だから、というと紫さんも和もあまりいい顔をしない。
けれど、機械には機械の、人間には人間の長所や短所がある。それだけのことだと僕は思う。
だから僕は機械としての長所を生かす。
「何かあったらすぐ起こすから、今は寝ててよ。ね、和」
言葉としての返事は何も返ってこなかった。
けれど、暫くして。
静かで整った寝息が膝の上から流れてきた。
Fine.