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2010.7.1 【水】
Novel stage / Fun Fiction:聖剣伝説LοM
《水の乙女》
白い砂浜。波打ち際では多くのカニが波と遊んでいるマドラ海岸。
長く続く砂浜の海へ突き出した部分、鳥乙女(セイレーン)の住む鳥カゴ灯台に一人の少女が訪れていた。
普段は美しい歌声の響く灯台からは、音楽は音楽でも少し毛色の違った音楽が流れてきている。
ととん、とん、ぽん、と軽やかなリズムを刻むドラムの音。
ぽん、ぽぽん、ぽん、と調和の取れた和音が響くマリンバ。
ぴ、ぴぃー、ぴぃっ、と高く低く身体を震わせるフルート。
ぽろろん、ぽろろん、と優しい旋律を奏でるハープの音色。
これはすべて灯台の中で踊る楽器たちによるものだ。
「たまには聞く側に回るのもいいよね」
精霊達の宿る楽器を運び込んだ張本人、レシスが水際で水面と遊びながら言った。いつも後ろで縛っている金色の髪は結い上げてポニーテールにしている。
「歌っているときとは、また違う楽しみ」
「ええ」
声をかけられた灯台の主、セイレーンのエレは定位置の石の上に座って頷く。穏やかな微笑みだが、楽しんでいるのは雰囲気だけでもわかった。
「確かに綺麗よね……あたしはエレの歌の方が好きだけど」
そして残り一人。上半身だけ水の上に出して岩場に寄りかかる人魚のフラメシュが、くつろぎながら呟いた。決して貶しているわけではなく、嗜好としての問題。
「私もエレの歌、とても綺麗で好き」
ぴしゃん、と一際大きな滴を撥ねさせてレシスが応えた。
その言葉に微笑みながら鳥乙女が返す。
「でも、わたしの声だけではこんなに綺麗なハーモニーは産み出せないもの」
言いながらも彼女は花びらの羽をふわりとはためかせ、石の上に立つ。
精霊達の宿る調和の旋律に、まったくその調和を崩さない完璧な歌声が加わる。
まるで人の領域も精霊の領域も超えたような気がするほど美しい、感動すら覚えるそのハーモニー。
「すごい幸せ……」
人間の少女は足をばたつかせるのもやめて聞き惚れ。
「……やっぱり、こうじゃなきゃ」
水の乙女が満足そうに微笑んだ。
Fine.