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2010.6.29 【角】
Novel stage / Fun Fiction:聖剣伝説LοM
《精霊の歌人(うたびと)》
小高い丘にぽつん、と立つ大きな樹。
根元に家を抱える樹の側には小さな小屋が二つと木々が連なる小さな森。
こつ。こつ。
そのうちの一つ、ゴーレムの作成や武具の作成などが行われる作成小屋からは慎重に削る音が聞こえる。小屋の主が真剣な表情で少しずつ道具を当てるのは白く長い牙だ。
切り落とした部分から徐々に牙の内部を空洞にしていき、途中で側面にもいくつかの穴を開けて内と外を風が通る道を作る。
空洞は牙の先まで続き、貫通。先を少し切り落としてから全体を綺麗にやすりで均す。
そこで完成かと思いきや、先端から十数ミリの部分に細い溝を刻み始める。金色の細いリングを通すと、その先に小さな飾りをつける。
作成主が武器を作った際に出た巨獣の角の欠片を削って作られたそれは、ハート型の双葉の真ん中から同型の大きな葉が出ているミントを象ったものだ。
つけた後の重さのバランスを確かめて小さく頷く。元が牙の為、その筒は先端部分の方がやや軽かったのだ。
出来上がった筒、いや横笛を片付けた机の上に置くと、隣にもう一つ置く。つぶらな瞳が浮かぶ炎のような模様が描かれた金色のコイン。
光の精霊ウィスプが作り出したマナの結晶、ウィスプの金貨だ。
横笛を作った主がコインの上に手をかざすといくつかの言葉を囁いた。ほんの呟くような一言二言に呼応して、金貨が光を放ち始めた。
金貨の輝きとはまた違う白く目映い光がじわじわと溢れ出すと、それは人の頭ほどの光球を形成し、隣に置かれた笛の中へと吸い込まれていく。
光は笛全体を一瞬輝かせると解けるように消えていく。
残ったのは同時に置かれた笛のみ。
作成者は残った笛を手に取ると、小屋の外へと歩いていった。
牧場の囲いの外、吹き渡る風が短い草を揺らす丘の裏手。
作成者は持った笛をふわりと浮かせた。いや、笛が自ら浮いた。
きらきらと輝きの残滓を残して手を離れた笛は、流れる風に身を任せ音を響かせた。
穏やかな木漏れ日を歌う、落ち着いた曲。
遠く遠くまで響き渡る天から降り注ぐ恵みを体現した調べに、穏やかなテノールの歌声が乗る。
目を閉じて歌詞のない調べを重ねる歌声は笛の作成者のもの。それは曲と共にどこまでも響き渡るのではないかと錯覚させるほど調和が取れていた。
金貨に描かれた光の精霊の幻影が笛に重なり、喜んでいるように白い炎を揺らす。
優しい日差しが降り注ぐ日の、優しい歌人の風景より。
Fine.