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2010.6.24 【土】
Novel stage / original:Two Little Stars
《くさかり》
太陽の光が強まる初夏。明るい日差しが降り注ぐ昼過ぎ。
お揃いの大きな麦わら帽子を被ったステラとアンテールは、伊藤家の中庭、家庭菜園でしゃがみ込み、じーっと土の上に視線を走らせている。
じわじわと進む時折、小さな手が地面に伸びる。
「にゃー」
ぷちっ。
「にゃっ」
ぷちっ。
暇なら庭の手入れをしてろ、と家主に言われたので、ネコの仔達は指示通り草むしりをしているのだった。
もちろん雑草と区別が付きにくい大根や人参といった根菜類の周囲はやらせないあたりは抜かりない。流石に苗で植えているトマトやピーマンならネコの仔達でもわかる。
何しろ大きさが違う。
「にゃあ」
ぷちっ。
「にゃん」
ぷちっ。
双子達の自分ルールなのか、何故か草を抜くときは一声鳴く。また列を変わるときは必ず同時だ。どちらかが早くてももう片方は待っている。誰に教えられたわけでもないが不思議な協調性がそこにあった。
「にゃう」
ぷちっ。
「うにゃん」
ぷちっ。
よほど夢中なのか、テンポよくにゃあにゃあ言う声は暫く続き、それぞれが持っているビニール袋がほぼ草で埋まった所で双子は同時に立ち上がった。
「ネコ終わったにゃ!」
「ネコもにゃ!」
避けるよう注意された部分を除いて、畝の間は綺麗に土だけが残っていた。
元気よくジャンプして立ち上がったネコの仔達は顔を見合わせて言った。
「飼い主に言いにいくにゃ!」
「ヒロシの所に行くにゃ!」
ぱちん、と両手を合わせると、双子は家の中へと勢いよく走り出した。
サンダルを縁側に脱ぎ散らし、どたただだただただと廊下を走り抜けると左右の障子を開けた。すぱん、と木枠同士がぶつかる音がした。
部屋の中でデスクトップと向かい合っていた家主が、音に驚いて双子の方を見た。
「終わったにゃ!」
「いっぱいにゃ!」
元気一杯満面の笑みを浮かべるステラとアンテール。
その様子を見た博は。
「そうか。よく頑張ったな」
珍しい笑みを浮かべて立ち上がり、双子達の方へ近付いた。綺麗にシンメトリーで手を挙げていた双子はにこにこと褒められるのを待っている。
「よく頑張ったと、俺は思う」
青年はステラとアンテールの前にしゃがみ、それぞれの頭を撫でる。気持ちよさそうに目を細めるネコの仔達。
「本当にそう思っている、が」
ぐっ、と青年の手が双子の頭にかけられたまま、力がこもった。
「家の中に入るときは手と足洗ってから入れって言ってるだろうが……!」
サンダルで菜園に出て草取りをしていた双子の手と足は土だらけで、駆けてきた廊下にきっちり土の跡が残っている。その上丁寧なことに草を入れているビニール袋を持ってきてしまった為、袋についた土までもがぼろぼろとこぼれていた。
「にゃあああっ! ごめんにゃ忘れてたにゃー!」
「ごめんにゃごめんにゃ痛いにゃー!」
そんな約束などすっかり忘れていたネコの仔達は、頭の痛みにわめきながら謝った。
「まったく」
青年はすぐ手を離すと、ネコの仔達が持っている袋を取り上げた。
「これは俺が片付けるから、お前等、手と足洗ってから廊下を掃除すること」
「はいにゃ」
「わかったにゃ」
ぴ、と真っ直ぐに手を上に伸ばして返事をする双子。再び廊下を走りだした背中へ、青年は一言言った。
「あ、今日の夕飯は魚だからな」
途端、双子は顔を見合わせた。両方の目がきらきらと輝いている。
「お魚にゃ!」
「やったにゃ!」
示し合わせたわけでもないのに、同時にジャンプしてハイタッチ。先程よりもうきうきした足取りで洗面所へと向かっていった。
その嬉しそうな二つの背中を眺めて、青年は袋を縛りながらこっそり呟いた。
「……まだまだ俺も甘いな。まあ、家の仕事したのは事実だからいいか」
Fine.