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2010.6.19 【増】
Novel stage / original:Two Little Stars
《おみやげ》
街中。とある出版社の建物にて。
「はい。確かに受け取りました」
木野崎美優はとんとん、と分厚い紙束をそろえる。
「いつも締切守っていただいて助かりますよ、伊藤先生」
「木野崎さん……締切は守るから締切です」
「そうは言ってもなかなか守ってくれないのが現実ですからねー」
博の呆れ顔を見ながら大判の封筒に束を戻した美優が笑う。
手の封筒をきっちり机にしまうと、彼女は床の上においてあった紙袋を取り上げた。
「ちびちゃん達は元気ですか?」
「ああ。一応、暇つぶしの道具を持たせて空いてる会議室に待たせておいた」
青年は溜息をつきながら答えた。
「同じ建物くらいは妥協するが、それより離れるのはまだ嫌がる」
「すっかりお父さんですねー」
くすくすと笑いながら女性は紙袋を青年へ渡す。
「いくつか子供服を見繕っておきました。ちびちゃん達にどうぞ」
「いつもすまない」
無愛想な表情の中にもどこか緩んだ印象に女性は笑みのまま、さらっと尋ねた。
「いえいえ。そういえばどうですか?」
「何がだ」
いぶかしむ青年。二人は双子を迎えに行きながら話を続ける。
「家族が増えた感想は、ですよ。伊藤先生一人っ子って言ってましたから、ちっちゃい子がいるのは珍しいんじゃないですか?」
「そう、かもな」
言われて見ればその通りで、博は少し考えた。
突然増えたネコの仔達。
最初から何故か妙に懐いていて、急に家の中が騒がしくなった。物も壊れるし、風呂に入ることを嫌がるので泥まみれになって怒鳴りつけたことも一度や二度ではない。
けれど、段々いて当たり前になってくると、あの騒がしさがないとどこか物足りないと感じてしまう。泣いていれば、助けてやりたいと思う。
「先生」
考えているうちに、いつの間にか会議室の前まで来ていた。
「ちびちゃん達が待ってますから、私はこれで失礼しますね。お土産の感想はまた今度」
によによと笑った顔で美優は博を見送る。
その表情を不思議そうに見やりながら、青年は会議室の扉を開けた。
飛びついてくる双子を受け止めながら思う。
これが子供を持つということなら、悪くないかもしれない。
Fine.