[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2010.6.16 【痺】
Novel stage / original:Abyss of Time ~ After the Nightmare ~
《戦いの後に》
月が真円を描く。
人々が眠りに落ちる。
その裏側で、誰かが消えていく。
「……だいじょぶ? 和」
僕は何とか復帰した言語機能を使って和へ声をかけた。
「ああ」
彼の使役するイレイサーはその姿を見せていなかった。ダメージが大きすぎて、おそらく暫くは休養を必要とする。
彼自身は何度か地面に叩きつけられてはいたが、答えた声もしっかりしていて立ち上がれる余裕はある。
「そっか。よかった」
僕は身体を動かせないままで安堵した。
ここ三ヶ月ほど調査を進めていた学校に出現するイレイサーを追い詰め、今まさに撃破し終わったところ。
今回のイレイサーは電気を纏う性質を持っていた上、それを広範囲に撒き散らす攻撃手段を持っていた。
最も高い所、つまり空を飛んでいた瞬が真っ先に雷を受け、咄嗟に腕を細長い針のように変形させた僕に残りが集まった。
イレイサーは一番被害を受けなかった和が銃撃で落としたし、ここは学校の屋上。結界も展開し終えていたから、僕達以外の被害はないだろう。
「お前は?」
「身体が痺れてるから、動けるようになるにはちょっと時間がかかりそう。調査班に纏めて回収してもらってもいいんだし、和は先に戻ってていいよ」
いつもなら笑って言うところだけど、あいにく身体が痺れているせいか上手く表情を変えられられない。
和は少し悩んでから答えた。
「ついでだ」
「わ、わっ」
答えの数秒後には、僕は和の肩に担がれていた。
「重いし熱いし、僕は置いていっていいよ!」
「大したことない」
身体のほとんどが金属部品に代表される人工の部品である僕は、身長の割には重みがある。大体男子高校生くらいだろうか。
更に電撃が流れた影響で、大方冷めたとはいえまだ熱を出したように身体が熱い。
けれど、まだ修復が完了していない状態では足をばたつかせることすら出来なかった。
「もう。和って変なところで働き者だよね」
「余計なお世話だ。いいから、大人しく自己修復に集中していろ」
「はいはい」
本当は大したことないはずなんてないのに、まったくそういうことは言わない。
僕を相棒に選んだことといい、実は天邪鬼だけど優しい和。
「……ありがと」
呟くと、一瞬動揺した気配。そして、ぽんぽん、と軽く背中を叩く手があった。
ねぇ、和。
もし、僕が本当のことを話してても、君は僕を相棒として選んでくれたのかな。
Fine.