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2010.6.20 【糖】
Novel stage / Fun Fiction:QМА
《Sweet After Class》 Clonica*Yu
マジックアカデミー、放課後。
生徒達は思い思いに過ごしていた。趣味に走るもの、友人と買い物に出るもの、ホウキレースやチーム戦の練習をするもの、予習や復習に勤しむもの。
クロニカは最後のグループに属するものだった。
寮の自室。授業が終わったばかりの為にまだ寮へ戻っている生徒は少なく、グラウンドからかすかに聞こえる騒ぎ声がよけいに静けさを強調する。
青年はぺらり、と本のページをめくる音が大きく聞こえた。
すると。
こんこんこん。
「ニカくん、いる?」
ノックと共に、最近聞き慣れた少年の声がした。
「ああ」
開いていたページに栞を挟んで閉じると、自室の扉を開いた。
正面数十センチ下にあるアメジストの瞳。小さな輪郭に子供特有の柔らかいライトブラウンの髪がそっと寄り添っている。
「どうした、ユウ」
青年よりいくつか年下の少年。けれど内側に秘める能力は未知数で、現に青年が遭遇したトラブルを解決する為に力を貸したのは少年だった。
そのせいか、どこか近寄りがたい雰囲気を持つクロニカに対してユウは普通に友人として接し、クロニカもまたぎこちなくはあるが同様に接しようとしている。
尋ねた青年へ答える少年は笑顔で持っていたお盆を差し出した。上に載っているのは軽くふきんがかけられた大きな皿、取り皿とフォークが数個ずつ。
「ルキアたちが練習に焼いたんだ。材料の買い出しを手伝ったから、おすそ分け貰って。一緒に食べよう?」
「構わないが……とりあえず入れ」
「お邪魔しまーす」
ぺこり、と頭を下げて入っていく少年。
これが初めてではないので、大体の配置はもうわかっている。迷うことなく机の上に両手で持っていたお盆を置くと、かけられていた布を取った。
素人が作ったにしてはバランスのいいホールのショートケーキ。そのうち八分の一カットが二つ中央に置かれていた。
「おいしそうでしょ?」
「ああ」
嬉しそうに言う少年に答えはしたが、青年はどちらかというと甘いものよりは辛いものを好む性質だ。一度気にすると、市販のものより酷く甘い香りが部屋に広がっていく。
「食べないの?」
逆に甘いものを好む少年はすっかり取り皿にケーキを乗せてご機嫌だ。
しかし好きではないから、と招き入れてから言うのはあまりにも失礼だ。
「ニカくん?」
不思議そうに見上げるユウの隣に座りながら、青年は一つ、妙案を思いついた。
「……無駄にしなければいいんだな」
「え?」
首を傾げた少年を悪戯を思いついた赤い瞳が見つめる。
クロニカは綺麗なフォークを取り上げると、皿に取り分けられたショートケーキを一口掬う。
そして、そのフォークの先をユウの口元へ近付けた。
「ほら」
「え?」
「好きなんだろう」
ちょん、と少年の唇をつつく。わずかに白いクリームが残った。
「好き、だけど。これはニカ君の分……」
そう口を開いたところで、フォークの上に載せた欠片を口の中に放り込む。
一瞬きょとん、とした表情が直に甘く優しく変わった姿に、青年は自然と頬が緩むのを自覚した。
「……幸せそうにお前が食べているのを見られれば十分だ」
「な、何、それ?」
戸惑うユウの頭を撫でながら、クロニカは残りのケーキもその小さな口の中へと与えていった。
「そんな日もあるということだ」
外では滅多に見せない優しい微笑を浮かべる姿に、少年もまた笑顔を見せた。
Fine.