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2010.6.23 【川】
Novel stage / original:Feast of Dolls
《コンクリートのほとり》
ぴっ、ぴっ、ぴっ。
小さな石が穏やかに流れる川の水面を三回跳ねて沈んだ。
投げた張本人は金髪のポニーテールを揺らし、不満そうな顔を見せる。
「上手くいかないわ」
唇を尖らせると、足下から平たい石を探して再び投じる。
ぴっ、ぴっ、ぴっ、ぴっ。
今度は一回増えた。けれど石が重たいせいなのか、直に沈んでしまった。
「ん、もぅ」
まだ少女は満足していないらしく、しゃがんで石を探し始めた。しかし何度も投げているため、近くには丁度いい石がもうなくなってしまっている。
「仕方ないわね」
彼女は立ち上がると川岸を上流へと歩いていく。
防波堤は完全にコンクリートで固められ、両岸は鉄骨の橋によってつなげられている。けれど川の側は草や石といった自然を残すようになっていた。
「中々丁度いいのがないわね……」
「ドリーさーん!」
ひたすら地面に目を走らせていた少女の頭上から声がした。
聞き覚えのある声に彼女は上半身をゆっくり起こした。橋の上によく知った制服姿が、手と鞄をぶんぶんと振っている。
「あら。もう学校は終わりなの?」
少女が呼びかけに応える。口調や態度は普段の探偵事務所で所長席に座っている時と同じなのだが、どこか外見に相応しい幼さが滲み出ていた。
知ってか知らずか、声をかけた少女の態度も少し親しみが強い。
「先生方の健康診断で午前授業です。ドリーさんはここでどうしたんですか?」
「ええ」
学校帰りの姿で川縁へと降りてくる少女を待ってから言葉を続ける。
「ちょっと水切りをしていたの」
「水切りって……川に石を投げる水切りですか?」
声をかけた少女が唖然とした。
水辺に立っていた少女の服装は白いレースのブラウスにヒマワリのオレンジが鮮やかな白地のサンドレス。おしゃれな日傘でも持っていれば、ちょっとした貴族のマドモアゼルのようだ。
しかし、ドリーはそんなことをまったく気にせずころころ笑う。
「そう。一度やったらなんだか懐かしくなってしまって」
よければ一緒に石を探してもらえないかしら、と言われて、少女は頷いた。
「時間ありますし、いいですよ。ドリーさんこそお仕事の方は?」
「貴女を呼び出していないということは、特に急ぎの仕事はないということよ」
そう微笑むと、また石を探しに地面を追いかける。
その仕草は真剣で、まるで子供が蟻の行列を追いかけるような真剣差が見え隠れした。
「(なんだか……知らないドリーさんを一つ知っちゃった感じ)」
鞄を放り出した彼女は心の中で呟いて、若い所長の後を追いかけた。
Fine.