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2010.7.21 【島】
Novel stage / original:Willwart
《孤島》
雲海の中にも孤島はある。
いや、むしろ空中都市ウィルワートは雲海の中に漂う孤島の集まりと言った方が正しいかもしれない。
ウィルワートの民、翼持つ民にとって、地が繋がっているかどうかはせいぜい建物が建てやすいかどうかくらいの問題だ。
従って、彼らにとっては大した問題ではない、のだが。
「ねぇ。レスターおにいさん」
白翼族の少女はぱたぱたと純白の羽ををはばたかせ、共に散歩へ出た白衣を纏う黒翼族の男性に尋ねた。
「どうかしたかな?」
「ちじょうのごほんにあったの。『ひとりでしまにながれついたら、あなたはだれにあいたいですか?』っていうしつもんなの」
彼女はうまく風に乗り、長い金色の髪を靡かせて彼と向かい合う。
「しまにながれついても、すぐにかえってこれるのに」
そういうと、小さく首を傾げた。
応える男性はふむ、と顎に手を当てると一つ頷いた。
「なるほど。確かにウィルワートでは実感が薄いものだな」
言いながら適当な雲の上に座る。
少女は隣に降りようとしたが、さりげなく伸ばされた腕に誘導されて男性の膝の上にふわりとおりた。
「たしかにちじょうのひとはとべないけれど、うみをおよげるのでしょう?」
「その通りだよ。けれど、地上の人達が泳げる距離は、我らが飛べる距離よりもはるかに短い」
見上げてくる好奇心に満ちたエメラルドの瞳へ、男性は言葉を返す。
「そして海は雲海よりも流れがあるせいで、一度流されると遠く遠く、知らない国へ流されてしまうこともある」
「しらないくに?」
「そう。私達でも三日は飛ばないと帰れないような、そんな土地へすら流されてしまう」
レスターは少女の頭を撫でながら話を続けていく。
「だから彼らにとって孤島へ流されるということは、戦争にでも行くようなもの。生きて帰れるかどうかもわからない、大変なことなんだよ」
「そう……そうなの」
そっと俯く少女。繊細な彼女は読んでいたものの事態の大きさにショックを受けているようだ。
予想通りの反応に、男性は彼女を姫抱きにして空へと舞い上がる。
黒い蝙蝠のような翼が大きく広がった。
「さて、君なら誰に会いたいかな」
「え?」
「その会いたい相手にうちの愚弟を選んでくれるのかな?」
笑いながら発せられた男性の言葉に、少女のきょとんとした顔が一気に紅く染まる。
何も言えない様子だが、一応落ち込んでいる様子ではなくなったのを見て、男性はさらに高く、高く、飛び上がった。
Fine.