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2010.7.19 【海】
Novel stage / original:Abyss of Time ~ After the Nightmare ~
《貝殻の浜辺》
紫さんが髪を左側にアップでまとめ、ハイビスカスの花飾りで止める。
「ふむ。たまにはこういうのも悪くないな」
僕達は海の家に出現したイレイサーを退治する代わりに、紫さんの希望で浜辺で一泊することになった。
それほど大きくはないビーチではあるが、白い砂浜の中に小さな貝殻が埋もれている、絵にかいたような浜辺だった。
「菘も楽しめよ?」
「はい」
紫さんは必要な道具を全て籠巾着に詰め込むと扉を開け放った。
浜辺に立つバンガローから出た時にはもう上に着ていたパーカーを脱ぎ捨てていた。その身体は小花柄のビキニによって一部分が隠れているものの、女性らしい柔らかな曲線を描く姿態は存分に披露されている。
紫さんは楽しそうな足取りのまま、浜辺を駆け下りて……。
「楽しんでいるか、和君!」
「ゆ、ゆ、紫さん!?」
和の背中にぴょいっと飛びついた。
ビーチパラソルを立て終わり、たまたま海の方角を見ていた和は反応しきれない。さらに気がついた後も無理に振りほどくことも出来ないまま、わたわたと慌てている。
「あ、あの、紫さん」
「どうかしたか?」
紫さんは背が低い為、必然的に紫さんは和の背中にぶら下がっている形になる。
そして、応える紫さんはどこか悪戯っぽく微笑んでいる。
もちろんその笑みが見えない和はまだ慌てていて、僕にも助けを求めるような、すがるような視線を送ってくる。
ただ、邪魔をすれば後で僕が怒られるのは必然。
「……和、頑張ってね」
「菘!」
僕は笑顔で和を見捨てた。
「パラソル立てた役得だと思えばいいよ。それじゃ!」
パーカーを和達のいるパラソルの下へと投げ捨てて、僕は海へと飛び込んだ。
冷たい水が身体全体を包んで、一気に身体の表面温度が下がる。
その感覚を楽しみながら、僕はぽつりと心の中で呟いた。
だって、まだ紫さんに壊されたくないし、ね。
Fine.