365 letters 2010.7.20 忍者ブログ
since 2010.1.1/1日1題に挑戦終了。現在不定期更新。
〓 Admin 〓
<< 05   2026 / 06   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30     07 >>
[214]  [213]  [212]  [211]  [210]  [209]  [208]  [207]  [206]  [205]  [204
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2010.7.20   【沖】

Novel stage / original:Abyss of Time ~ After the Nightmare ~

《海の思い出》


 



「……紫さん」
 バンガローから歩いて数分のすっかり夜も更けた浜辺。
 紫さんの部屋に明かりがついていなかったので見に来てみると、昼間の明るい花柄の水着とは違う、落ち着いた黒のサンドレスを纏う紫さんがビーチチェアに座ってぼんやり空を見上げていた。
「和君は?」
「明日早いし、運転手だから先に寝たよ」
「そうか」
 僕の作成者はこちらに視線だけ動かして問うと、また空を見上げた。そのビーチチェアの隣に立って、空へ向かう視線を追う。
 真円を描く月。
「……なあ、思い出さないか」
 紫さんがぼんやりと星を見上げたまま、唐突に呟いた。
「沖縄、行ったときのこと」
「……はい」
 同じ空を見ながら、僕も同じことを思い出していた。
 北の大地に研究を抜け出して行った時は僕と紫さんだけで、帰って来てから皆に怒られた。
 それからしばらくして、僕達は紫さんの研究集会に同行して沖縄へ行った。心さんは助手として、僕は研究成果の一部として。
 公務で、更に環さんと心さんの二人がかりで叱られたために紫さんがセーブしていたこともあり、珍しく心さんもはしゃいでいた。
 日中は紫さんや他の錬金術師の人たちの発表を聞いて、夜は砂浜へ出て花火をしたり、星を見上げたり。
 集会は一週間程続いた為、時には昼間抜け出して水族館に行ったりもした。
「あの時も、こうだったな。真面目な心はさっさと寝て、私とお前は抜け出して」
「南十字星が見えるから、って、チェアを持ち出してずっと探しましたね」
「ああ……結局、別の島じゃないと見えないってことだったんだが」
 ふう、と紫さんが一つ溜息を吐いた。
 紫さんもいろいろ思い出しているようで、その表情はあまりいいものではない。
「……大丈夫ですよ」
 僕は紫さんの暗くなる表情を見て、あえて明るい声を出した。
「心さんは強い人ですから。どこにいても元気でやっています!」
 励ますようにしていった言葉ではある。けれど、これは僕自身も信じていること。
 心さんは僕の師匠で友達で、どんな逆境でも夢を諦めたりしない、心のとても強い人。
 だから、僕は断言する。
「……そうだな」
 すると、紫さんは漸く笑ってくれた。
「私の助手を勤められた心が、そう簡単にくたばる訳がないな」
 そしていつも通りの元気な表情を見せてくれた。
 気を取り直したように、椅子の上から砂浜の上へと勢いよく跳び降りる。舞い上がった砂はさっと手で払っていた。
「さて、私達も寝るか。菘」
「はい」
 僕はビーチチェアを片付けながら、笑顔で返した。


 Fine.

 

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret (管理人しか読むことができません)
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カウンター
カレンダー
05 2026/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
プロフィール
HN:
梨雪
性別:
非公開
自己紹介:
かってきままに ぶらぶらと
ブログ内検索
P R
世界樹の迷宮Ⅲ
Copyright(c) 365 letters All Rights Reserved.* Powered by NinjaBlog
* photo by 空色地図 * material by egg*station *Template by tsukika
忍者ブログ [PR]