[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2010.7.17 【作】
Novel stage / original
《Oenanthe No.2》
森の奥。
片隅には小さな泉が湧いている開けた広場。
黄に橙、青に紫、赤に白と様々な種類の花が思い思いにその花弁を広げている。
その端には、長いオレンジ色の髪を青いコイフで止めた少女が一人、しゃがんでいた。
側においてある年季の入った大きなバスケットには種類ごとに分けられた花や葉、根などがまとめて入れてある。
しかし、それとは別に少女は花を摘んでいた。
小さな花と大きな花を組み合わせて小さな輪を作る。
「ねえ。それなに?」
すると、どこからともなく声が聞こえた。幼い男の子のようだ。
ただその姿はどこにも見えない。花畑にいるのは少女ただ一人だ。
「花冠を作りたいの」
しかし、少女は当然のように言葉を返した。視線は手元に落としたまま、小さな指先が上手く花冠を編んでいく。
「花冠?」
きらっ。
コイフの少し上辺りに小さな輝きが灯る。
「ええ。そんなに長くは持たないけれど、少しは華やかになるかな、って」
少女は照れた笑みを浮かべる。際立って美人というわけではないが、人をひきつける微笑み。
輝きがきらきらと点滅する。
「確かに可愛い。ナンシィ、つけてみてよ」
輝きははしゃいで喜んでいる様に見える。対して、言われた少女の方は戸惑い気味だ。
「つ、つけるの?」
「うん。僕、ナンシィが花冠被ってるの見たい!」
ちかちか瞬く光を見て、少女は戸惑いながらコイフを外してバスケットの上に置いた。腰辺りまで緩やかなカーブを描くオレンジ色の髪がふわり、と風に揺れる。
そして、彼女は色鮮やかな冠をそっと頭に載せた。
少女自身の髪の色がかなり明るいが、数々の花達はその明るさを殺すことなく、負けることもなくしっくりと納まっていた。
「すごい……すごい可愛いよ。ナンシィ」
光がひゅんひゅん彼女の周りを飛び回る。よほど興奮しているらしい。
「花がすごく似合う。君みたいな人こそ、本当に花の妖精なんだよ」
「や、やだ、セリ。何言ってるのっ!」
あまりに手放しで誉められたせいか、少女は顔を真っ赤にして俯く。
動転したあまりバスケットを両手で抱えると、慌てて立ち上がり森の中へを消えていった。
光は暫くくるくる飛んでいたが、駆け出した少女を追いかける軌跡を残していった。
そして。
その軌跡を追いかける、一人の影……。
Fine.