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2010.6.9 【葉】
Novel stage / Fun Fiction:ととモノ。
《一枚》
パルタクス学園の生徒ならまず最初に探索することになるトレーン地下道。
普段なら六人で挑むはずの場所に、立っているのは二人だけ。
「それじゃ、がんばろっか!」
元気良く手を上げる、弓矢を持ったクラッズの少女と。
「目的を忘れるな」
手に持った剣を確認する冷静なフェルパーの少年。
「わかってるってば。雪見草の冠を見つけること、でしょ?」
「ああ」
学園での課題。それは二人一組でトレーン地下道に隠されたアイテムを持ってくることだった。
花は違うが、出された目的の物は全て花冠。花の咲き誇る具合によって評価が変わるという。
「とりあえずどこにあるかもわからないし、効率よく全てのフロアを回るほうがいいのかな」
「そうだな。漏れのないほうがいい」
少女が進行方向を偵察しながら、少年が他の方向へ注意を配る。
それは今までの探索で落ち着いた役割分担。人数が多ければ其々の役割が増えるが、基本的に彼らの行動方針はこうだった。
何も言わずに自然と組んだ連携で、二人は地下道を歩き始めた。
地下道は広い。
着実に進んできているとはいえ、二人では一つの階層を探索し終わるのにもかなりの時間がかかった。
「うーん……中央部の方なのかな」
途中で見つけた体力回復がてらクッキーを齧りながら、二人は小休止を取っていた。
「ここまで何もないところを見ると、そのようだ」
「だとしたら、先に行って調べちゃおうか。もし見つからなかったら、戻りがてら探そうよ」
「ああ」
答えながら立ち上がった少年は、剣を構える。
「片付けた後で、な」
「うん。もちろん」
にっこりと笑った少女もまた弓と矢を手に取った。
二人の視線の先には羽虫に死霊の群れ。
「先手必勝! お先に行っくよー!」
少年が距離をつめる間に少女は矢を放つ。狙い違わず一直線に飛んだ矢は羽虫を直撃、消滅させた。
仲間が消えたことに慌てながらも、虫や霊は逃げることなく突っ込んでいった少年を迎え撃つ。
羽音を響かせながら飛び上がる小さな姿を少年は一つ一つ斬り、落としていった。
刃を抜け、背へ回り込もうものなら、少女の矢が待ち構えている。
手馴れた様子で戦い抜ける二人。しかし、一つ誤算があった。
「……っ!」
「きゃあ……っ!?」
順調に戦っていた二人の動きが急にぎこちなくなる。
原因は少年の周りから少し離れたところにいた、水溜りから三つの頭が出たような死霊が発生させた音波。金縛りを発生させる振動が動きを戒めたのだ。
羽虫はほとんど残っていなかったが、死霊の数は少ないもののそれ程減っていない。
前に出ていたフェルパーの少年が残った群れによって囲まれていく。動くことは、出来ない。
「この、ままじゃ……っ!」
本当は痺れさえ取れれば、少女の力でこの死霊達を片付けることは可能かもしれない。
けれど、そうなれば少年が無事ではいられないだろう。彼女では守りながら戦うという芸当は出来ないのだ。
少女は自らも痺れてろくに動けない中、倒れこむように少年の側まで走っていった。
「ユノ……」
驚いた漆黒の瞳に、今にも閉じられそうな橙色の瞳が映る。
「……にげ、て」
ふらふらと立っていられない少女を抱えたザクスの唇に押し当てられたのは一枚の葉。身体の麻痺を除去する効果を持つ葉だ。
少しずつ身体の自由を取り戻していく少年。だが、一方で無理をした少女はその場に崩れ落ちた。
死霊達の範囲網はほぼ完成しかけている。
少年は一つ頷いた。
「……斬り抜ける」
ユノを片手に抱え、固めた決意を唇に乗せた。
To be continued...