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2010.5.7 【砂】
Novel stage / Fun Fiction:ととモノ。
《砂漠》
パルタクスとマシュレニアの中継地点、ジェデロ砂漠。
ザクス達はカウサ地下道を抜けてこの地へ来ていた。あと一つ、ジェデロ地下道を抜ければもうマシュレニアに着く。
「あっつーい」
「敵はいるけど、地下道が恋しくなるねぇ」
「まったくだ」
口々に暑さへ文句を言いながらアラン、ユノ、ラッセンがそれでも元気よく砂漠の中の中継地点へと歩いていく。
「……文句の割には、元気そうなことで」
続くのは本当に暑さでへばって浮いているユーシェル。最後尾には無言のままついていくザクスとカゲロウの姿があった。
オアシスの中にある中継地点は砂漠だからこそだろうか、砂漠にも負けない程の熱気で賑わっていた。
「うわぁ。結構商人さんいるねぇ」
真っ先に着いたうちの一人、アランがきょろきょろを周囲を見回した後。
「ちょっといらないもの売ってくるよー」
パルタクスから二つの地下道を通ってきたので取得物も溜まって来ている。
「私も行く。荷物もち」
「って俺かよ!? まあ、美人さんの頼みは断れないけどさ……」
呼応したのはカゲロウ。その手は既にラッセンを掴んでいた。アイテムの専門家である錬金術師と盗賊という審美眼に関しては問題のない組み合わせだ。
「うん。ありがとー。じゃ、この辺にいてねー」
「待てお前まで掴むなこら!?」
アランは彼の掴まれていない方の腕をとる。ラッセンの抗議はまったく聞こえない振りで、カゲロウと一緒にずりずりと引きずって行った。
「あ、気をつけてねー」
ユノがぶんぶんを手を振ると、カゲロウが去り際に一回振り返って言った。
「……ごゆっくり」
「?」
ザクスがその意味を問い返す前に彼女達は人混みの中に紛れてしまった。
不思議そうな表情をしつつもフェルパーの少年は、へばったフェアリーの少年を抱えて日陰の休憩所へと向かった。
その後ろでクラッズの少女が顔を真っ赤にして声にならない声で叫んでいるのも気付くことなく。
「ユノ」
「あ、ありがと。ザクス」
日陰に備えられた座席へユーシェルを横たえ、飲み物を買って席に着く。学園などより飲料の値段は高いが、かといって何も買わないわけにもいかない。
しばしの沈黙が場を支配する。
話す気力のないフェアリーの少年を除いても、彼らには会話がなかった。普段であればはしゃぎまくるユノも何故か静かなのだ。
「……お前は大丈夫か」
唐突に少年が口を開く。
ジュースを手にぼんやりとしていたユノは弾かれたように顔を上げた。
「え? あ、うん。暑いのは平気なの」
「そうか」
「うん」
ユノは慌てながらもきちんと答える。けれど後の言葉が繋がらない。また沈黙が続きそうになる。
「……その」
「あ、あのっ」
慌てて付け足した発言が重なる。二人はますます慌てだした。
「えっと、さ、先にどうぞ」
「いや。そちらこそ」
「いいのっ! 先に言いなさいっ!」
ばんっ、とユノが顔を真っ赤にして机を叩く。立ち上がるほどの剣幕に戦士であるザクスが一瞬怯んだ。
しかし次の瞬間、彼女は再び真っ赤になって腰を下ろす。
「ご、ごめんっ! 怒鳴るつもりはなかったんだけど……」
「気にするな。何をそんなに慌てているんだ?」
クラッズの少女の暴れように驚きはしたものの、フェルパーの少年はもうさほど焦っていない。平然と問を返せるほどだ。
その落ち着きっぷりに返ってユノの方がパニックになってしまう。
「あ、あのね。あのね。何でもないのっ!」
「……ユノ?」
「本当になんでもないのっ!」
混乱が頂点になりかけた時、第三者の声が響いた。
「……あのね。君達」
横になっていたユーシェルが起き上がったのだ。
「少しは体調を崩した人間を寝かせてやろうという気はないかな」
「すまない」
「ご、ごめんね」
起き上がって即座に文句を言う少年へ、二人は平身低頭で謝る。
彼らへユーシェルは呆れた口調で続けた。
「それにまだ気付かないのか」
「な、何に?」
言われたユノがきょろきょろと周囲を見回す。そしてその目は直に彼が指すものを発見した。
「ちょっとっ!?」
「ばれたー」
「ち。中々いい見世物だったんだが」
とっくに売買を終えて戻ってきていた三人の姿が商店に隠れてあちらこちらに見えている。しっかりと見物する気満々だ。
「私は止めた方がいいと思ったのだけれど」
「戻ってきていたのか」
少女の反応で漸く気付いたザクス。しかしその頃には彼女の怒りは頂点に達していて。
「……コロス」
ぶちきれた少女が弓を構え、必殺の矢を放つ。その攻撃はまさに当れば死をも招きかねない一撃。
「ちょ、ちょっとユノちゃん本気出さないでー!」
「待て話せばわかるきっとわかるっ!?」
「一回灰になってきなさいっ!」
何故か一般人にはまったく影響の出ない矢の雨がアランとラッセンに降り注ぐ。
一人まったく訳のわからないザクスが呟く。
「どうしたんだ?」
その言葉に残った二人が溜息をついたのは、当然の結果だった。
Fine.