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2010.5.4 【緑】
Novel stage / original:Willwart
《Power stone》
「ふむ。義妹殿の誕生石は緑柱石か」
「たんじょうせき? りょくちゅうせき?」
ウィルワートのブラックパール邸では、今日もパールとレスターが地上についての本を読んでいた。
蔵書の持ち主はあっさり内容を理解しているが、遊びに来ている白翼の少女はそうもいかない。今の発言も彼女にはわからなかった。
黒翼の男性は持っていた本を彼女に開いて見せた。色とりどりの輝きを秘めた石が、丁重に描かれていて、その脇には何やら解説が書いてある。
「これは地上の宝石についての本でね。このウィルワートにある宝石は有翼族が死して、魂のみが凝固したものだと言われている」
興味深そうに机の上へ寄りかかって見る少女。集中するその姿へレスターは解説を続けた。
「けれど地上では違う。地上における宝石は、大地の底で眠りにつく石達が特殊な過程を経て素地を作り、職人が磨き上げて初めてこの輝きを宿すものなのだよ」
「そうなの!?」
少女は目を丸くした。
「じゃあ、ちじょうにはこれはいっぱいあるの?」
「いや。石によって素地の出来うる条件は違うし、例え発掘できても加工が失敗すれば全てが終わる。地上でもそれなりに貴重なものだ」
言いながら、レスターは違う本を開く。先程の本より厚みのないそれを開くと、そこには小さく書かれた先程の宝石を含めた表が描かれていた。
「これはなあに?」
「誕生石と言ってね。地上の人々は大地から与えられる美しい結晶には力があり、特に生まれた月に応じた石は持っていると加護を与えると信じている」
「じゃあ、わたしは……りょくちゅう、せき?」
パールが自らの誕生月を読み取って、緑の石の絵を指差す。
「そう。緑柱石。エメラルドだ」
黒翼の男性は引き出しから小さな鏡を出して白翼の少女へ差し出した。不思議そうな顔をする彼女に持たせて彼は言う。
「君の瞳のような色だよ」
「ふぇ?」
「エメラルド。君の瞳のような澄んだ緑色の輝きを持っているのだよ」
金髪碧眼の少女は目をぱちくりさせた。太陽の光を受けるその瞳は、確かに宝石にも似た輝きを秘めている。
「地上の伝承通りだとすれば、義妹殿は生まれもって天と地の加護を受けていると言うことだね」
「えへへ。なんか、うれしいの」
じっと見られたパールは少し照れながらそう答える。
微笑ましく見ていたレスターはそこでふと思いつく。
「そうだ。今度機会があれば、我が愚弟にも教えてあげるといい。きっと喜ぶ」
「ほんと?」
ギルフォードが喜ぶ、と聞いて少女は更に目を輝かせた。
「ああ。何のことかわからないと言われたら、指輪のこと、と言えばいい」
「ゆびわ?」
「そうだ」
笑いながらそう言う黒翼の男性。パールもまた満面の笑みで頷いた。
「うん! そうするの!」
そして、彼女は再び誕生石の表に夢中になる。
「アレクおにいちゃんはわたしとおなじ。ギルくんとレスターおにいさんは?」
「ああ、私達はね……」
純粋な興味から尋ねてくるパールへ答えながら、レスターは内心で笑っていた。
(さて、我が愚弟はどう反応するかな……)
Fine.