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2010.5.3   【法】

Novel stage / Fun Fiction:ととモノ。

《Region》


 


 

 澄み渡った青い空の中。
 パルタクス学園で午前最後の授業終了のチャイムが鳴り響いた。
「……さっぱりわからなかったな」
 カースエントが苦笑しながら鞄を持って立ち上がる。無言で頷いたザクスもその後に続くいた。
 今の授業は魔法に関するものだった。生徒達も所属する学科によって取得する魔術士魔法、僧侶魔法、超能力、それから召喚魔法。それぞれの主な効果や使い方、注意点などについてだ。
 けれど、彼ら戦士にはその何れも使うことは出来ない。その為、感覚的にもいまいち掴み難いのだった。
 休み時間となり、何人もの生徒と同時に教室から出る二人。
 しかし、すぐに呼び止められた。
「ザクスー!」
 廊下を思いっきり走ってくるのは荷物を抱えたクラッズの少女。その後ろをセレスティアの少女が微笑みながらついてきている。
「ユノ。マリーチも」
「ご飯、たーべよっ!」
 荷物ごと体当たりしてくるユノをザクスは受け止める。
 遅れてゆっくり歩いてきたマリーチは追いつくと、ぺこり、と挨拶。
「こんにちは。ザクスさん、カースエントさん」
 フェルパーの少年は無言で返し、バハムーンの少年は手を上げて言葉も返す。
「よう。そっちも終わったみたいだな」
「はい」
「ん、もぅ! 話ならご飯食べながらやろーよ」
 特に何の返事もしていないのだが、ユノの中ではもう確定事項らしい。近かったザクスとマリーチの手をぐいぐい引く。
「ま、確かにここにいても邪魔。折角晴れてるし、外行こうぜ」
「……ああ」
「はい」
 カースエントも二人の背中を押し、四人は校舎の外へと歩き出した。

 寮の裏側、柔らかい芝生の上にオレンジ色のシートを敷く。ユノがいつも弁当と一緒に持っているもので、大体三人くらいで昼食を取るのだがシート自体は七人くらい座れるほど広い。
「今日は山の幸にしてみましたー」
 全員が座ると、ユノが早速重箱の蓋を開ける。山の幸と言っただけあって、山菜や肉類が中心になっている。春らしく筍やわらびが目立つ。
「お。いつもながら、ユノは頑張ってるなぁ。これだけ作るのは大変じゃないか?」
 話は聞いていてもあまり参加することのないカースエントが感嘆の声を上げる。四人でも十分すぎるくらいの量が重箱には詰まっている。
「今日はマリーチちゃんと作ったの。だからお礼はマリーチちゃんにもね」
「私はお料理を習っていただけですから。ほとんどユノさんがお作りになったのですよ」
 少女達が簡易の食器を配る。受け取りながら、少年達は礼を返す。
「ユノもマリーチも、ありがとうな」
「……ありがとう」
「喜んでいただければ嬉しいです」
「えへへ、どういたしまして。じゃ、いっただきまーす!」
 照れながら応えたユノの号令で昼食が始まった。暫くは皆が食べることへ夢中になる。
 しかし、それが過ぎれば雑談が始まる。
 最初の話題は今日の授業にあった魔法についてのことだった。
「あれはよくわからなかった」
 顔をしかめたのはカースエント。ユノが笑いながら応えた。
「わたしは面白いなーくらいで聞いてたけど、大変なことになったクラスもあるみたいだよ。ある生徒と先生で魔法議論が始まって皆ぽかーんとしてたりとか」
「……しそうなのを知っている」
 ザクスが呟くと他の三人にも該当者がわかり、忍び笑いが起こる。
「しかし魔法って便利だよな」
「うん。わたしも使ってみて思ったわ」
 うんうんと頷くカースエントとユノ。魔法のうちユノは超能力が、マリーチは魔術士魔法と僧侶魔法が扱える。
「確かに何でも出来そうに見える」
 ザクスもそれに同調する。しかしセレスティアの少女はやんわりと言った。
「けれど、過信しすぎはいけません。出来ないことも、沢山あるのです」
「でも便利なことには変わりないよー。例えばわたしやラッセンがいなくても、マリーチちゃんやサフィくんがいれば宝箱なんとかなっちゃったりするじゃない」
 ユノがフォークをぴこぴこと振りながら言う。
「戦闘でも迷宮探索でも使えるしな。そのうち全部魔法でなんとかなったりして」
「過ぎる力は神魔の領域……手を出しては、いけないものです」
 司祭という学科に身を置く彼女に取って、それは大きな意味を持つことなのだろう。
 マリーチは視線を落とす。その落ち込み様にカースエントとユノが顔を見合わせて沈黙した。なにを言ったらいいかを目線で相談しあう二人をよそに、ザクスが口を開いた。
「随分と、必死だな」
 責めている訳ではなく、ただ事実のみを告げる。
 すると少女は慌てて皆を見回してぺこぺこと謝り始める。
「あ、あの、ごめんなさい。ただ危険だって言いたくて、それだけなのです。ちょっと言い過ぎてしまったようで申し訳ありません」
 あまりの慌て様に、今度は何を言おうか戸惑っていた二人の方が慌てだす。
「い、いいの。わたし達もちょっと調子乗ってたし、ね!」
「そうそう。マリーチが気にすることないさ」
「でも……」
 三人とも慌てだしてしまった為にますます収拾がつかなくなってきたところで、再び口を開いたのはフェルパーの少年。
「早く食べないと、時間がなくなる」
「あ、まずっ!?」
 真っ先に反応したのはユノ。よく動く少女にとって栄養補給は何よりも大切らしい。
「早く食べよ! 皆も早く早く!」
「あ、あまり慌てては……」
「んきゅうっ!?」
 忠告する前に喉を詰まらせたクラッズの少女へ、予想していたザクスが水筒から飲み物を注ぐ。
 それからほどなくして、昼休み終了のチャイムの音が鳴り響いた。


 Fine.


 

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