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2010.4.29 【肉】
Novel stage / Fun Fiction:LοV
《閑話休題:野外の三分クッキング》
山の中、獣は足音を立てることなく進んでいく。
すらりとした四足が大地を踏みしめ、蹴りつける。それは野生でありながらいっそ優雅ともいえる均整の取れた姿態。
黒く丸い瞳が太陽の光を受けながら、ふと、何かに気付く。
長い角のついた頭が空を仰ぐ。しかしそれは僅かに遅かった。
「えいっ」
なんとも力の抜ける掛け声と共に、細くしなやかな足は長い錫杖に払われていた。
堪らずバランスを崩すその首に当てられたのは、上から真っ直ぐに振り下ろされる冷たい、刃物。
「ただいまー」
元気良く戻ってきたルヴニールは、カイムと共に運んできた獲物をヒルダへ渡した。角も立派な大きい鹿だ。
受け取ったヒルダが感心する。
「ほぅ。大きいな」
「うん、重かったよー」
『重いのも確かだが、お前ももう少し筋力をつけろ』
即座に笑顔で弱音を吐く青年へ、男性が嘆息した。
「では火起しを手伝ってきてくれ。私が捌く」
「はーい」
カイムは無言で、ルヴニールはいい返事をして場を去る。その後姿を見送ってから、ヒルダは愛用の長刀を持ち上げた。
実は背後にこっそりと紅瞳の青年が戻ってきていることにも気付かずに。
(どんな料理するのか、な…………)
こっそりと覗く目が大きく見開かれた。
だんっ!
長刀の一撃で絶命した鹿の首が跳ね飛ばされた。
更に一対の長刀がひらめいて、その皮が綺麗に剥かれていく。
(う、わ、あ……)
肉を手早く今日の食糧分とこれからの保存食用に分けて捌き、抜いた骨を砕く。
大きな刀が、がつん!と一発で骨を折る。
殺気さえ漂ってきそうな勢いに、ルヴニールはこっそりその場を離れた。
『どこに行っていた』
「……怖かったよぅ」
『……?』
その夜の食事は非常においしかったことを付け加えておく。
Fine.