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2010.4.28 【弁】
Novel stage / original:Two Little Stars
《がやがや》
博は静かな会議室で淡々と打ち合わせをこなしていく。
久しぶりの落ち着いた空間だった。そう、ネコの仔達が来る前には当たり前にあって、今はほとんどない空間。
一週間と経っていないはずなのに、妙に懐かしく感じた。
「では、次回はこのように」
「はい」
開放感と一抹の寂しさに違和感を覚えながら、博は企画書とノートパソコンを鞄の中へ
しまう。一礼して立ち上がった途端。
「にゃあああああああっ!?」
静かな空間は破られてしまった。
今のは明らかに聞き覚えのある声だ。
「な、何事でしょう」
今まで話していた担当者が原因を探して周囲を見回している。確かにここは独立した部屋ではなく、仕事をしているデスクが並ぶ部分とパーティションを切っただけの場所だ。仕事をしていた人達も驚いている。
けれど発生源はここではない。
「隣の部屋、か?」
開きっぱなしの扉を見る。今のは明らかに外からだった。
博は慌てて廊下に出て、三つほど離れた扉の開いている部屋に入った。
そこはラウンジスペース。社員や外部からの来客が思い思いに座って、昼食を取ったりノートパソコンを開いたり休憩したりと時間を過ごしている。
そしてそのうちの一つ、四人掛けのテーブルに突っ伏す探していた姿。
ネコの仔達が自分の手をふーふー吹きながらにゃあにゃあ騒いでいる。側に美優はおらず、他のことをしていたであろう人々もがやがやどよめいている。
「あっついにゃっ! ネコ焦げちゃうにゃ!」
「ステラしっかりするにゃ! 早く冷やすにゃ!」
テーブルの上にはいくつもの駅弁が積み上げられていて、そのうちの一つから湯気が上がっていた。
「あ、伊藤先生、そこどけてください!」
博を突き飛ばさんばかりの勢いで入ってきた美優は、手に水の入ったコップを二個持っていた。
「き、木野崎さん」
「ステラちゃん。はい、お水よ」
「あ、ありがとにゃ」
ステラはごくごくと勢いよく飲み干す。その様子を見ていたアンテールもほっとした表情を見せた。
「……何があった」
少々呆然としながら、博は騒ぎの中をテーブルへと近付く。美優はばつの悪そうな顔をし、反対にネコの仔達はぱあっと明るい表情になった。
「飼い主にゃ!」
「ヒロシにゃ!」
「ええ、と、これは、ですね」
双子は目の前に積んであった弁当から視線を放し、青年へ駆け寄ると腕にぶら下がる。
重さに床へと引っ張られながらも、彼はテーブルへとネコの仔達を降ろした。
その間におろおろしながら美優が説明したところによると、ステラとアンテールを遊びに連れ出したが、途中で空腹を訴えた為に弁当を買いに行ったらしい。たまたま近くのデパートの食品売り場では各地の駅弁や空弁のフェアをやっていて、博の分も含めて大量に買ってきてここで食べていたとのことだ。
「その中にヒモを引くと温まるお弁当がありまして……」
温泉地の弁当によくある仕掛けだ。青年はその時点で何が起こったのかを察して脱力した。
「思いっきり引っ張ったにゃ!」
「そしたらあっつかったにゃ!」
ご丁寧にネコの仔達が残りも説明してくれた。
ぺこぺこと頭を下げる美優。
博はまた日常が騒がしく染まっていくのを感じた。
Fine.