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2010.5.24 【遅】
Novel stage / Fun Fiction:LοV
《吹雪の希》
止まぬ猛吹雪。
防寒具を着込んだ二つの人影が凍り付く家の間を抜けていた。向かう先は村の中、家の日陰に当たる部分だ。
「……駄目ですわ。枯れてしまっている」
「こっちもー。さむ……なかなか見つからないねー」
大きな杖を抱える褐色の肌の少女とがたがた震えながらついていく青年。
お互いを見失わないよう距離を離さずに、時折近くにある家の側の雪をかき分けて植物を確認する。
村を襲った異変は植物にも影響を与えていて、寒さに耐えきれず枯れ、萎びたものが多い。だが、中に村人と同様一瞬にして凍りつかされたものもあった。
枯れてしまっては香として使えない。そこで、凍らされ、原形を保っている物を採取、解凍しようということになったのだ。
「でも、意外ですわね」
雪を掘りながら、シャーマンは聞こえるように青年へ言った。
「なにがー?」
背中合わせで別の壁沿いにある雪を掘っていたルヴニールは手を止めた。あいかわらず寒さに震えながらではあるが、さぼってはいない。
少女は小さな雪山を形成しつつ言う。
「私、寒いところが嫌いな貴方は出てこないものだと」
「流石に好き嫌いでわがまま言える状況じゃないよー」
苦笑し、青年は再び手を動かし始めた。
「私は」
その姿を確認もせず、背中合わせのまま褐色の肌の少女は続ける。
「貴方があの方をそこまで気にしているとは思っていませんでしたわ。いいえ。あの方だけではなく、ここに存在する者全てにおいて」
「え?」
ルヴニールは初めて振り返った。白く染まる視界の中でも、少女の褐色の肌や濃い茶髪ははっきりと紅い瞳に映る。
「貴方はとても優しいですわ……けれど、私、時折思いますの」
指先が土に当たる。草は、枯れていた。
「実は貴方はそう私達に見せているだけで、貴方は貴方自身の目的の為には私達をいつでも切り捨てられるのではないかしら」
少女は溜息を一つつくと、再び雪をかけなおす。小さな雪山はあっという間にただの雪原の一部となった。
そして立ち上がると、じっと見ている紅い瞳を見返した。
「……否定しては下さらないのですね。ルヴニール」
「……否定して欲しい?」
にっこりと、ルヴニールは微笑んだ。
「そう信じているシャーマンちゃんにとって、私は否定しても信じてもらえない立場じゃないかなー」
もしも否定を"優しさ"と取ったなら、彼女にとってそれは演技としてしか見られないだろう。
肯定すれば、信じていることがそのまま信じられる。
つまり、ルヴニールに返答の余地はないのだ。
「……ごめんなさい。これは卑怯ですわね」
彼女自身も気付いたのか、一礼して謝罪の言葉を述べる。
そして次の壁へ向かう前にシャーマンは言った。
「でも、私は、否定して欲しかったですわ」
吹雪の中でその細い指先が再び白い雪を掻く。
ルヴニールもまた、大地に宿る凍れる植物を探す。
吹雪は、未だやむ気配がない。
To be continued...