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2010.5.23 【病】
Novel stage / original:Abyss of Time ~ After the Nightmare ~
《sick》
いつものように僕は、他の人がいない警察の中の部屋で書類仕事を見ていた。
ここ数日はイレーサー退治の方が続いていて、その後処理の書類が山になっていた。いくら書類嫌いの和といえど、流石に山を崩すことにしたらしい。
もっとも。
「……菘。新しい箱」
「はいはーい」
ボールペンを走らせながら言う和へ、僕はティッシュの箱を棚から出してきた新しい物に変えた。空になった箱は綺麗に畳む。
昨日のイレーサーによって湖に突き落とされた和は、風邪を引きかけていたせいで書類整理に回されていた。きちんと時間も定時に帰れるよう指示が出ている。
紙くずの溜まったゴミ箱を一度捨てて戻ると、机の角にティッシュが小さな山を作っている。
「ねぇ、和。大丈夫?」
「ああ」
元に戻したゴミ箱へ早速片付ける。鼻水をぐずらせながら、書類に署名をしていく和はすこし息苦しそうだ。
「体調悪いなら早く休んだ方がいいんじゃないかな。薬とか飲む?」
刑事なんて職業をやっている以上、丈夫なことはわかっているがそれでも心配になる。
すると、和は僕の頭にぽん、と手をのせて軽く撫でる。
「大丈夫だ」
それだけ言うと、また次の紙を手に取った。
納得は出来ないが、僕はお茶だけ入れて和の机を離れる。
定位置のソファに座って、自分用の飲み物を入れた。温かいお茶を飲んでいると思考が段々薄くなっていく。
「菘……菘?」
気がつくと、目の前で和が呼んでいた。鼻が少し赤い。
「……ん……のどか?」
そこで初めて僕はぼんやりしていたという事に気付いた。
窓の外を見てみれば辺りはすっかり茜色に染まっている。
「そろそろ帰るぞ」
「うん、ごめん。ぼーっとしてたみたいだ」
慌てて立ち上がる。
人造人間である僕も回路に負担がかかり続ければ人と同じ疲労という状態になる。
戦い続きだった影響は僕自身にも出ているのかもしれない。
「早く和には休んでもらわないとね。行こう」
率先して扉を開けて外に出ようとした。
「待て」
しかし、和がそれを止めた。
「何?」
振り返ると和の手が額に当たる。温度が僕の肌より低く感じられた。
「和?」
「熱い」
和は眉をしかめる。
「大丈夫だよ……ちょっとオーバーヒート気味ではあるけど、機能停止するほどじゃないから」
「……風邪を引くのも一緒、か」
言いながら、和は僕の腕を持ったまま電話をかける。
「僕にウィルスは関係ないって。何やってんの?」
二言三言かわすと直に電話を切った。
「タクシー会社に連絡した。直に来る」
簡潔に一言で言うと、そのままソファへ寝転がる。必然的に腕を引っ張られることになり、僕はソファの側に座る。
「僕ちゃんと運転できるって。それに車どうするの?」
「明日は歩いて来ればいい」
「……まあ、いいけどさ。和がそうしたいなら」
流石にソファへもう一人乗るには狭いので、和の頭の側に僕も頭を傾けて置く。
「まだ寝るなよ。そんなに時間はかからない」
「和こそ。寝てもいいけど、起こしたらちゃんと起きてね」
きっとお互いに意識がぼんやりとしてきた中で、僕達はそんなことを言い合っていた。
Fine.