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2010.5.18 【旧】
Novel stage / original:Two Little Stars
《謎》
りんりぃーん。
古めかしい呼び鈴の音がする。
「お客様にゃ!」
「お迎えするにゃ!」
家主よりも早く、耳も尻尾もぴんと立てたネコの仔達が反応すた。手に持っていたクレヨンを放り出す。
「郵便か何かか……ってこら! お前等がでるな!」
反応が遅れた博が止めた時にはすでに遅い。双子はぱたぱたと玄関まで駆けていき、鍵を開けていた。
慌てて立ち上がり、追いかけた青年は入ってきた人物を見てその歩調を緩めた。
「こんにちは、ステラちゃん、アンテールちゃん。あ、先生もご在宅でなにより」
「ミユーにゃ!」
「こんにちわにゃ!」
手を振るのは双子を両手にぶら下げた担当の美優だった。
「俺はついでですか」
ため息をつきながらも博は安堵した。彼女は世話を頼んだこともあり、ネコの仔達のことを知っている。
けれど、世間一般ではこのクローンタイプは非常に珍しい物だ。知らない人が見れば何を言われるかわからない。
そんな思いを知ってか知らずか、女性は手にぶら下がる双子へ言う。
「今回はネコちゃん達にいろいろ持ってくるのが目的でしたから。運ぶの手伝ってもらえるかしら?」
「もちろんにゃ!」
「お手伝いするにゃ!」
すっかり美優にも懐いたステラとアンテールは張り切って家の外に出る。足下は先日美優に買ってきてもらったお揃いのサンダルだ。
ぱたぱたを駆ける様子を微笑ましく見守る青年へ女性は声をかけた。
「それじゃ、私も運び込みますね。いつもの和室でいいです?」
「ああ」
クレヨンが飛び散っているであろう部屋の状況を思い起こした博は、運び込むネコの仔達が来る前に片づけるべく部屋へと向かう。
その途中で、何の気なしに呟いた。
「まさかこの不便な旧家が役に立つとは、何が起こるかわからないな」
隣人に釈明をする必要がない広い家へ珍しく感謝しながら青年はスリッパの音を立てて歩いていった。
美優が持ってきたのは主に服や靴などの身につける物やおもちゃといった遊び道具。後は食べ物や日用雑貨がいくつか入っていた。
ネコの仔達は服や雑貨を一通り見た後、遊び道具の中にあるオセロにはまって現在も二人でやっている。
付きっきりになっていなくても大丈夫なほど集中しているため、博と美優は応接スペースへ場所を移した。
コーヒーもいれて腰を落ち着けると、用事の一つを美優が話し始める。
「新聞部の方でも聞いてみましたけど、クローンタイプのネコが脱走したとかいなくなったといった話は上がってないそうです。かといって、自然発生するようなものでもないですし、何かありそうですね」
双子の前では見せない真剣な表情で女性は言った。
家からほとんど出ない青年と違って彼女は社内、社外を通じて顔が広い。それを生かしてネコの仔達についての情報を集めてもらっていたのだ。
「結局、何かあるということ、くらいですか」
コーヒーを片手に悩みながら博が呟く。
「あら。ちゃんと確認することは大切ですよ。そうしないと探す場所が見つかりませんからね」
美優が平然と答えるが、まだ青年は悩んでいる。それは彼女の返答に困っているというよりは、何かを決めきれていないようだ。
「先生?」
もう一度声をかけると、漸く彼は反応した。
「……あ、ああ。助かった。こちらでも当ってみる」
「このくらいお茶の子さいさいですけど、意外ですね。先生にも伝手があるんですか」
気を悪くした様でもなく、どちらかというと好奇心で美優が尋ねた。
すると、青年は苦虫を相当な数噛み潰したような表情を見せる。
「あんまり関わりたくないけどな……まあ、祖父母からの腐れ縁って所だ」
話した時の事を想像したのか、両肘を突いて頭を抱えた。
「せ、先生?」
「いや……まあ、旧家にしてみればいろいろとしがらみもあるってことだ」
心配そうに身を乗り出す美優に返事を返して、博は頭を上げる。そしてそのまま立ち上がると別の部屋へ歩き始める。
「もうそろそろあいつらが飽きる頃だ。暴れられる前に相手をしないとな」
「あら、もうそんな時間ですか」
背を向けた状態で言う青年の言葉に、美優は平然とついていきながらも内心じわじわと笑みが広がっていった。
(あんなに子供の相手なんて苦手って言ってたのにね……)
振り向きもしない相手には気付かれることもなく、女性の口の端は上がっていた。
Fine.