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2010.4.22   【形】

Novel stage / original

《スリープドール》


 


 

 今日、パパがお誕生日プレゼントをくれたの。
 両手で抱えないといけないくらい大きな羊のぬいぐるみ。お顔と目と足は真っ黒、だけど毛は真っ白でふわっふわ。
 嬉しくていつもより沢山パパにキスしたわ。もちろんママにもよ。
 それからパーティみたいなご馳走とかわいいイチゴのケーキを食べて、ボードゲームやカードで遊んでいたわ。
 もっともっと遊んでいたかったけど、ママがもう寝ないと綺麗になれないわよって言うの。
 でも、ベッドに潜り込んだらすぐに眠たくなっちゃったのよ。いつもより一時間は遊んでいたせいかしら?
 羊のぬいぐるみはもちろん抱えていたわ。嬉しかったし、ふわふわしているのがとっても気持ちよかったの。
 するとね、誰かが呼びかけてくるのよ。
「フロイライン」
 って!
 私、うとうとしてたけど、あなたは誰なの、って尋ねたわ。
 そうしたらちゃんと答えが返ってくるの!
「私の名はシャーフ。貴女の眠りと共に在る者。貴女の夢の道先案内人」
 その声は頭の後ろから聞こえてくるの。でも後ろを振り返っても誰もいないのよ。
 それに声というよりは、頭の中に響いてくるような、そんな感じなの。
「さあ、貴女の夢の世界は貴女が決める。貴女はどこへ行きたい?」
 よくわからなかったけれど、多分男の人だと思うわ。パパよりもっと大人の人。
「どこへ行けるの?」
「どこへでも。貴女の望むままに」
 私の前に黒くて丸い手が差し出されたの。そっと私が握ると、とても柔らかいのよ。
 私は何故か安心してその手を取るの。
 そして、黒い円らな瞳が訴えるの。どこへ行きますかって。
 だから私は答えたわ。
「お誕生日会へ行きたいわ。今日とっても楽しかったのよ」
 羊は三日月のように目を光らせて笑ったの。
「貴女の望みのままに。フロイライン」

 溢れるほどのおもちゃ。
 甘くてかわいいお菓子。
 ふわっふわのお姫様のベッド。

 そして、笑顔のパパとママ。

「ねぇ。ここから帰るのにはどうするの?」
「帰りたいのですか? フロイライン」
「ううん。そうじゃないけど……」
「ではもっと遊びましょう。次はお飯事にいたしましょうか」
「うんっ!」

 スリープドールは今日も子供達を喜ばせている。 

「向こうへ行くと、お友達もいますよ」
「本当! いくわ!」

 自分の箱庭を完成させるために。


 Fine.


 

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