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2010.4.18 【苦】
Novel stage / original:Two Little Stars
《ついんず》
ぴんぽーん。
「んにゃ? 誰か来たにゃ?」
「誰か来たにゃ。ネコが行くにゃ」
博の私室の隣にあるネコの仔達の寝床になっている八畳の畳の部屋。彼らは昼食を終えて、雑紙の裏にクレヨンで絵を書きまくっていた。
家主は呼び鈴に耳もしっぽもぴん、と立てて二人が反応したのを押しとどめる。
「行くなこら。そこでおとなしく待ってろ」
スリッパが木製の廊下を歩いていく軽い足音が離れていった。
ネコの仔達は顔を見合わせる。
「ヒロシどうしたにゃ?」
「ネコに隠し事にゃ?」
ステラが不満そうに持っていた青のクレヨンを紙の上でぐるぐる回す。
「むー。ネコに言えないことにゃ?」
アンテールもやはり赤のクレヨンをぐるぐる回す。
「ネコに隠し事なんて許せないにゃ」
子供達は同時に頷き合う。ちょうど遠くから再び足音が戻ってくるのを聞きつけて、それぞれクレヨンを構えて障子の後ろに隠れる。
とんとんとん、と軽く響いていた音が止まった。
(いくにゃよ)
(がってんにゃ)
がらっと障子が開く。
「にゃー!」
「にゃー!」
同時にネコの仔達がクレヨンを突き出しながら飛び出す。
しかし、その先には誰もいなかった。
「にゃにゃ!?」
「にゃっ!?」
「……やっぱり、な」
大きな伝票の張られたダンボールを担ぎ障子を横から開けた博の溜息の前を、子供達が勢いよく跳んで行った。
しかし流石ネコ。その状態でもくるん、と前方に一回転。足から地面に着地する。
「何でいなかったにゃー!?」
「おかしいにゃ! ヒロシ来てたはずにゃ!」
足を泥だらけにしながら地団駄を踏む二人。青年はふっと鼻で笑いながら、声をかけて部屋へ入る。
「お前らがやりそうなことなんてお見通しだ。そのまま外回って身体全部洗ってから戻って来い。じゃないと廊下に上げないからな」
「く、悔しいにゃーっ!」
「せこいにゃ! 飼い主せこいにゃーっ!」
更にいきり立つが気にもせず博が行ってしまったため、嫌がりながらしぶしぶネコの仔達は風呂場へと向かったのだった。
「ヒロシ終わったにゃ!」
「とっとと白状するにゃ!」
開いたままの障子の向こうから、ばたばたと足音も荒くバスタオルを被っただけのネコの仔達が戻ってきた。
まだ怒っていた様だが、部屋の中の様子を見ると好奇心に目を輝かせる。
「服にゃ!」
「服がいっぱいにゃ!」
博がパーカーやコートからシャツ、下着の類までダンボールから適当に出して、畳の上に並べていた。
青年は戻ってきたステラとアンテールを見て苦笑する。
「お前ら、先にこっち来い」
「な、なんにゃ?」
「ちゃんと洗ってきたにゃ!」
慌てた二人がばたばたと暴れる前に、まずステラをひっつかむ。
「まだ濡れてるだろ。ほら」
被っていたタオルでごしごしと髪を拭いていく。
「にゃー」
「あ、ステラだけずるいにゃ! ネコも! ネコも!」
気持ちよさそうに目を細めるステラを見て、アンテールも博の背中にすがってねだる。
「順番だ。少し待て」
耳まできっちり水気を取ってやると、アンテールも抱えて頭を拭いてやる。こちらも嬉しそうにされるがままになっていた。
「お前ら、外見だけじゃなくて性格も似てんなぁ」
感心した青年がそういうと、二人は口々に言った。
「ネコとアンテールはそういうものらしいにゃ。生まれた時から一緒だからにゃ」
「ネコとステラは双子だから似てて当たり前らしいにゃ」
「双子なのか。お前ら」
二人には髪の長さ以外に違いはほとんどないとは思っていたが、クローニングの元が同じせいだと博は考えていた。元になる遺伝子が同じであれば外見が似るのは、それこそ双子と同じ原理だ。
だが、双子というからには一つの卵から生まれたのだろう。
納得して頷いているとネコの仔達は同時に頷き返した。
「そうにゃ。ネコは女の子だけどにゃ」
「そうにゃ。ネコは男の子だけどにゃ」
「……は?」
呆然としている青年をよそに、二人は広げられた服をにゃあにゃあ言いながら選んでいく。何も着ていない事もあって早速着てみてさえいる。
子供ということで性別を大して気にしていなかった博はその騒ぐ姿を見ながら、苦虫を噛み潰したような表情で服の調達を頼んだ友人に心の中で感謝した。
Fine.