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2010.3.15 【幸】
Novel stage / original:Willwart
《幸福な悩み》
「ギルくん、こんにちわっ」
「ああ……!?」
いつものようにいつもの如く。パールが入口から翼をはためかせて入り、ギルフォードが曖昧に返す。しかしゆっくりと上げられた青年が驚愕の表情で凍る。
輝く金髪は脇だけ緩く編まれ、その上にヴェールと白い花の冠が乗っている。サテン生地の白いドレスはウエストから裾が丸く広がっていて、肩と腰の部分に小花のコサージュがいくつもついていた。
おめかしは服だけでなく、名前と同じパールのイヤリングとネックレスが落ち着いた輝きを放っている。
「えへ。びっくりした?」
少女は嬉しそうにくるん、と回って見せる。ドレスの上のパニエがふわっと風を含む。
「あ、ああ」
驚きが消化されると、今度は次第に赤くなっていく黒翼の青年。
「どうしたんだ?」
「こんどおうたのはっぴょうなの。それでおにいちゃんたちがせっかくだからって」
少し照れながらも綺麗な衣装に少女はご満悦のようだ。けれど、彼女には気になることがまだあった。
「あのね。ギルくん」
「あ、ああ」
まだ少し固まっている青年へ、パールもまた赤くもじもじしながら尋ねる。
「にあう、かな?」
「え」
何故か意表を突かれたように慌てるギルフォード。
あたふたするだけで何も言えない青年に少女の笑顔が段々しょんぼりとしていく。
「にあわない、かな」
「そ、そんなことはない」
ギルフォードは更に焦りながらも何とか答える。
「とても似合ってる……可愛い、よ」
そう言うと、パールが再びぱあっと明るい笑顔を見せる。
「ギルくん、ありがと!」
少女は青年の腕の中に飛び込んで抱きついた。
暫く遊び、歌の練習があるからと少女が家へ戻った後。
「やれやれ。随分と微笑ましいことだね」
全てを見ていた青年の兄がニヤニヤ笑って、本のページから視線を上げた。
「煩い」
「愛してるとか好きだとか言ってあげれば、義妹殿ももっと喜んだだろうに」
「煩いっ」
ばん、とギルフォードはフォレスターの机を叩いた。その頬は先程よりも紅葉のように赤く染まっている。
「確かにパールはいい子だけど、まだ子供だ!」
すごい剣幕で食って掛かってくるが、兄はまったく動じずに言い返す。
「あの子は成長の止まるのが早かっただけで、もうそろそろ年頃だろう。お前だって先程の姿に地上のウェディングドレスでも見出したのじゃないか」
「そ、そんなわけ……っ!」
フォレスターには全てお見通しのようだ。
「ウィルワートの民には寿命がないから一般的ではないが、婚姻を結ぶ者がいないわけではない。私としてもあの素直で良い子が義妹になってくれれば嬉しいしね」
「兄貴っ……もういい!」
黒翼の青年はそっぽを向いてリビングから出て行った。
「まったく。素直になれば幸せは目の前だというのにね」
その背を見送って、フォレスターは笑みを噛み殺した。
Fine.