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2010.3.16 【松】
Novel stage / original:Absoetia
《道知れず》
まだ雪の残る松の林。真円を描く月が昇る空は薄黒い雲が覆い、足下すら覚束無い。
人気どころか動物の気配すらない山を歩くのは、松明を掲げた一人の青年。
揺らめく炎が白銀の鎧に映って輝く。
彼は漆黒の闇の先でも、まったく迷うことなく進んでいく。
山にそって歩いて。歩いて。
暫くすると更に濃い闇、洞穴の入口が現れた。
青年は真っ直ぐその中へ入っていく。
入口近くは自然に生じたようで荒い岩肌を晒しているが、奥へ行くにつれてなだらかになっていく。明らかに人の手が入ったものだ。
曲がることなく続く闇の奥。
洞穴の行き止まりには東屋のように整えられた石の神殿。祭壇のように置かれているのは透明な棺だった。
松明の灯に照らされて、徐々に見えていく棺の中身は。
白き髪、青白い肌。身に纏う衣まで純白の。
彼の、親友。
「……っ!」
「ラート?」
青年が目醒めると、夢の中で眠っていた親友が目の前にいた。
現在彼らの護衛する王子が城を離れている為、二人も警護要員として同行している。その過程の野宿だ。
現在は交代で休む時間なので眠っていて問題はないが、どうやら隣で眠っていたはずのキルシェも起こしてしまったらしい。
「体調でも崩しましたか?」
あくまで冷静に尋ねる親友へラートは軽く頭を横に振って、目を覚ます。
「いや……大丈夫だ」
答えに疑問の目を向けるキルシェ。だが、あえて追求はしてこなかった。
「まだ暫く休めますよ。私は見回りに行ってきます」
それだけ言って彼は立ち上がる。歩き出そうとした青年の手を、ラートは咄嗟に掴んでいた。
掴んだ方も掴まれた方も驚く。
「何か?」
「……俺も行く」
不思議そうに振り返ったキルシェに、ラートはそう告げて立ち上がる。親友は寝かせようとするが押し返す。
「……休んでいた方が」
起きた時の様子の悪さを知っているせいかあまりいい顔はしないが、騎士の青年は押し切って彼に並ぶ。
「目が覚めた」
「倒れても知りませんからね」
背後でキルシェが呟くのを聞きながらラートは外へ歩き出す。悪夢を振り切るように。
Fine.