365 letters 2010.3.19 忍者ブログ
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2010.3.19   【聖】

Novel stage / Fun Fiction:SN2

《聖域》


 


 

 今日の戦いについて問題点をマグナに投げつけて、彼は与えられた部屋へ戻った。澱のように溜まる疲れに苛まれながら扉を開けると、先客がいた。
「随分と中途半端な所で投げるんだな」
 それは皮肉げに笑う護衛獣の悪魔。
 誓約のせいで姿は子供のようだが、本来は魔界におけるかなりの実力者らしい。それが開け放たれた窓の側で腕を組み、こちらを嗤いながら見ている。
 この悪魔が気紛れなのはいつものことなので、居る事自体はそれほどおかしくない。
「勝手に人の部屋へ入り込んでまで何の用だ」
「ケッ。手前の持ち物じゃねぇだろ」
「誤魔化すな」
 彼は言葉を返すと外套や杖といった外へ出るための装備を外す。その背に向けて、悪魔は言った。
「どっかのメガネと同じことをしただけだぜ?」
 彼の動きが一瞬止まった。一瞬だけ。
「何のことだ」
 すぐに何事もなかったようにその手は動き出す。
「オイオイ。そこまで正直に反応しといてよく言うぜ」
 窓枠に寄りかかっていた悪魔が肩をすくめ、彼に近付いていく。
「今回、違和感がありまくりだろ。それを戦闘評価に切り替えて思いっきり話逸らしたのは誰だ、あぁ?」
 語尾が上がり、詰問に近い口調になる。それでも彼は答えることなく、手も止めない。
 きっ、と悪魔の眉が吊り上がる。
「っざけんな!」
 数歩の距離を足音も荒く一気に詰めると、彼の腕を掴んで引く。いきなり力をかけられたことで後ろにたたらを踏む彼を、側の寝台に向かって倒した。
「っ!」
 なすすべもなく寝台に背中から落ちる彼が起き上がる前に、喉元を掴んで縫い付ける。話させる為に彼の胴部へと乗り上げて動きを封じた。
「手前ぇ……何隠してやがる?」
 悪魔は喉の手を彼の肩に移し、更に固める。
 しかし、彼は痛みに眉を顰めるだけで眼鏡の奥の眼は平静を保っていた。
「君が穿ち過ぎているだけだ」
「俺を誰だと思ってやがる。さっきも、今のお前からも、暗い気配がしてんだよ」
 ぎり、と悪魔の掴む指に力が入る。
「大体、僕がそんなことをして何の意味がある」
 冷静に告げる彼に悪魔はせせら笑う。
「ふん。お前があそこでわざわざ話を切ったってことは、あのニンゲン絡みだろ」
 そう告げると、彼の顔が強張った。
「当ったみてぇだな。とっとと吐いちまえ。何もわかってないまま巻き込まれてる今の状況は、オレサマにとって不愉快なんだよ」
 彼はしばし沈黙し、それから口を開いた。
「期待には答えられない」
「んだとぉ!」
 苦痛にかまわずきっぱりと拒否する。彼の返答に悪魔が再び戒めに力を入れた。
 しかし、今度はまったく表情を変えない。
「だが、君の言っていることは間違ってない。そして、僕はマグナの為に言うことは出来ない。僕に言えることはそれだけだ」
「……なんなんだ?」
 悪魔は腑に落ちないという表情をする。
「お前にとって、あのニンゲンは神か何かか? ただの弟弟子にしちゃ随分と気ぃ使ってるじゃねぇか」
 すると彼の表情が自嘲を色を帯びる。
「それ程大層なものではない、が……踏み込み過ぎてはいけないと言う意味では神域……いや、聖域には近いのかもしれない」
「あん?」
 否定してくると考えていた例えに不思議な答えを返され、悪魔は怒りを抜かれる。
「……バルレル、そろそろ僕は休みたいんだが」
「あ、ああ」
 思いっきり毒気を抜かれた悪魔、バルレルは大人しく彼の上から避けた。そしてその行動に一つ舌打ちをする。
「……ぜってぇ吐かせる」
 悪魔は言って、窓から去っていった。
 彼は寝台に倒れこんだまま、手を顔の前に翳し、眼鏡を取る。
「……馬鹿なことを言ったな」
 溜まった疲労に引きずり込まれるように、ネスティはそのまま眼を閉じた。


 Fine.


 

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