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2010.3.23 【岩】
Novel stage / original:Abyss of Time
《和風錬金術師の夜》
草木も眠る丑三つ時。
普段不夜城の如く灯の消える時がない『久遠の薔薇』の研究所だが、今日は建物中の灯りが消えていた。
なぜならば。
「……今まさに契りを交わそうとしたその時。男の目にははっきりと見えた。毒薬によって顔が無残に崩れ落ちた、死んだはずの妻の姿が……!」
ぽちっ。
『う……ら…………め……し……ぃ……』
「きゃああああっ!?」
「今動いた! なんか白い影動いた!!」
「というか何か聞こえたーっ!?」
僕が押したスイッチによって動いた発生音が限りなく小さいレコーダーによって再生された微かな音と炎が揺らめいた影に動揺する、研究所の研究員や事務員の人たち。
灯りは紫さんの持つ一本の蝋燭だけ。
「そして悲劇はここで終わらなかった。同じ頃、お岩の霊に取り付かれたお袖が包丁をふりかざす……!」
ぽちっ。
どどどどかーん!
「「「ひぃわあああああぁっ!?」」」
音と窓の外に仕掛けたライトによるライトであたかも雷が鳴ったかの様に感じさせる。本来なら振動も起こるはずだが、恐怖に脅えた彼らは気付かない。
「狂った男は墓の前で刀を振り回し、近寄る役人すらも血糊に変えていった」
紫さんは低く声を潜めて、怖い雰囲気を盛り上げる。
「そして……男の耳元に聞こえ出す、聞きなれた女の声……!」
ばんっ!
「きゃあああっ!?」
「ぎゃーっ!」
急に扉が開かれ、懐中電灯の明かりが差し込んだ。あまりに唐突だった為、恐怖で余裕の無かった彼らはパニックに陥る。
「なにをやっているのですか貴方達!」
入ってきた環さんが混乱した部屋に驚きながらも怒鳴りつけた。
そんな彼に、唯一動揺していない紫さんが自分の顔を下から照らしながら最後の一言を呟いた。
「殺された女の笑い声が響く……」
「ひぃはははははははははははは」
紫さんの合図で最初から入口付近にしゃがんでいた僕が、入ってきた環さんによっかかりながら教えられた通りに嗤い出す。
すごい勢いで顔が僕の方に向いた。そして。
「わ」
環さんはそのまま気絶してしまった。僕の方へと倒れてきたので、下敷きになる。
「む。こら環、すずなを襲うな!」
紫さんが電気をつけながら怒っている。混乱していた人たちも明るくなると落ち着いてきて、口々に感想を言い合っている。
しかし部屋を出ようとして僕の顔を見ると、一斉に悲鳴が上がった。
「なかなか楽しかったな」
「紫さん、僕がこのお岩さんの格好をして入口にいたのは何故ですか」
「絶対環が邪魔しに来ると思ったからな。いやーいいタイミングだった」
Fine.