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2010.3.28   【強】

Novel stage / Fun Fiction:Fire Emblem 聖戦の系譜

《Turn out Fruitless》   Seti(Bragi)*Arthur(Seti)


 


 

 強くありたい。
 大切なものを、守りたいから。

 同時に三つの城を落とすべく放たれた竜騎士部隊のうち、アーサーはもっとも近くの城へ向かう部隊を追いかけていた。
 今頃、もっと遠い城へは天をかける術を持った者やワープの杖によって送られた者達が迎撃に向かっているはずだ。
 攻略していた城とは違う三箇所への攻撃のため、城攻めに参加していたメンバーは動くのに時間がかかる。アーサーはたまたまその前にダメージを受けていて下がっていた為、直に馬を駆って来たのだ。
 怪我を治いたセティが何か叫んでいたようだが、距離はあっという間に離れていき声も蹄の音が打ち消していた。
 そして、真っ先に遭遇した竜騎士が振り返る前に紡いだ雷を叩きつける。
「ぐああっ!?」
 苦痛の声に同じ城を攻め落とそうとしていた騎士が一斉にアーサーへと注目する。
 集中した視線に不敵な笑みを返し、母親譲りの雷の魔法書から父親譲りの風の魔法書へと持ち替える。伝説と呼ばれる風を纏いながら、彼は告げた。
「来いよ。全部纏めて吹き飛ばしてやる……!」
 風へ載せられた重圧に竜さえも一瞬脅える。
 だが、目の前にいるのは所詮体力のない魔法使い一人に過ぎない、という事実が騎士達へ勝機に似た何かを見せてしまった。
「敵は一人だ! 押し包んで殺せ!」
 あっという間に囲まれる刃物を持たぬ姿。風が目の前の竜騎士を切り刻もうと、その穴は直に埋まる。
 だが、竜騎士達の槍も風に流されてほとんど届くことはない。攻撃した隙を突かれ、その数を減らしていく方が多いくらいに。
 もちろん、他の城の防衛に回っていない仲間達も追いついてきつつある。けれど完全に囲まれている為に合流までは至らず、更に彼を護る風が包んでいて声すら届かない。
 多少の傷などもろともせずにアーサーは風の刃を振るい続けた。
「次は、誰だ」
「く……この地は渡さぬっ!」
 短時間で減っていく部下達を見かねた隊長格のドラゴンナイトが直接向かっていく。その穂先は他の者達とは違って鋭い。
 護る風だけでなく彼自身も相当身軽であるが回避しきれずに魔法書を持っていない方の腕を刺される。
「つっ……返すぜ!」
「が……っ!」
 即座にカウンターで打ち出される魔法にドラゴンナイトは堪らず膝を屈した。
 直後。
 竜騎士達の向こう、別の城の近くから巨大な雷が落ちるのをアーサーは見た。それが親しい気配を持つ魔力によって呼び出されたものであるということも、傷ついた時にしか発揮されないものであるということもわかってしまった。
 一瞬、意識が逸れる。
「ティニーっ……ぐ、っ!」
 隙を見逃すほど竜騎士達は甘くない。同士討ちをしないようタイミングをずらしながら次々と槍を繰り出していく。
 反射で穂先を掻い潜るが、隊長格のものとあわせて二条の槍が右足と腹部を抉る。
 咄嗟に魔法書を抱えて彼は落馬した。ろくに受身も取れない身体に硬い地面がぶつかって更なる苦痛を与える。
「つ、あ……っ!」
「今だ! 簒奪者どもを蹴散らせ!」
 動揺が合流しようとする仲間達へと連鎖していったらしく、一気に声を張り上げるドラゴンナイト。
 だが、直に後悔する事になった。
「……簒奪、だ……?」
 ゆらり、と、言葉を聴いた瀕死の魔法使いは立ち上がった。その足下では血溜まりが出来つつある。
「奪ったのは、どっちだよ……」
 風は再び纏われ……勢いを遥かに増していく。魔法として打ち出されなくても、触れれば切り裂くほどに強く。
「……俺達の両親を、国を、最初に奪ったのはどっちだよ!」
 琅玕の瞳が強く輝き、紡がれる言葉が怒りを帯びる。重圧は先ほどの比較にならないほど強く、重い。
「そして」
 ごぉっ、と渦巻く風は術者の身すら浮かべた。赤く染まった草が千切れて飛んでいく。
「今も、俺の大切なものを傷つけるのは――誰だ!!」
 怒りが無意識のうちに風を紡がせ、怪我をしていない方の腕が周囲を薙ぎ払うと同時に爆発する。父親から受け継いだ伝説の魔法すら扱える魔力が、母親から受け継いだ生命が危機に陥った時に増幅される魔力によって一気に引き出されているのだ。
 悲鳴すらかき消す暴風が、彼の周囲を取り巻く。
 それは側にいた竜騎士を跡形も残らないほどに細かく刻み、その外側の竜騎士さえも切り裂く。
 強大な力の恐怖に逃げ出そうとした竜すらも間に合わず、その顎に飲み込まれる。
 渦巻く風は竜騎士を全滅させてなお止まることなく吹き続けていく。
 そして、他の城を護っていた仲間達が合流する頃。不思議なことに彼の仲間を傷つけることはなく風は静かにその足を止め、流れていく。
 包まれていた中で残ったのは、微かに残る竜騎士達の残骸と生命力も魔力も使い果たした主を背に乗せる一頭の馬だけだった。


 To be continued...


 

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