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2010.3.29 【星】
Novel stage / Fun Fiction:Fire Emblem 聖戦の系譜
《Turn out Fruitless No.2》 Seti(Bragi)*Arthur(Seti)
強くありたい。
大切なものを、守りたいから。
アーサーの覚醒した意識が真っ先に捕らえたのは石の天井だった。
いつ閉じたのかわからない瞼を開けるとやわらかな光が目をさす。
「……俺、いつ寝たっけ……」
戦闘の途中で意識を失うなんて情けないなと呟きながら、彼は身体を起こそうとした。けれど、何かが乗っているようで身体が重い。
ぼんやりとした視線を天井から下へ向けると、シレジアの民特有の深い緑色の髪の青年が寝台に突っ伏していた。
手には癒しの杖が握られている。
「セティ……おい、セティ」
状況がよくわからないまま、突っ伏した肩を揺さ振る。
小さな呻き声と共に起き上がってくるセティを見ながら、ふとアーサーは思い出した。意識を失う前に確か彼と会っていたような。
未だ状況を把握できないうちに金色の瞳は開かれ、更に気付くと大きく見開かれた。
「アーサー!」
「おはよ、起きれないからよけ……うわっ!?」
からん、と杖を落とした青年はいきなりアーサーの肩をつかんで大きく揺さ振った。
「痛い所とか、体調が悪いとかは」
「ない、けど」
あまりの剣幕に驚きながら、彼は答える。実際、少し身体が重くはあるが特に痛みが走るような部分はない。
すると、一気にセティの力が抜けてその頭が胸の上辺りに落ちた。
「……よかった」
心底安堵したその様子を見て、彼はまた少し思い出した。敵陣の中に真っ先に突っ込んでいったことを。そういえば制止する声がかかった、気がしないでもない。
「ちょっと無理、したか?」
気絶したということは心配させたかもしれない、と彼は尋ねてみた。
「ちょっと、ですまない」
呟くと同時に、青年の手にぎゅっと力が入った。怪我などよくあることなのだが、それにしては様子がおかしい。
「……使うことになるかと、思った」
小さな声がアーサーの耳に引っかかった。
「え?」
咄嗟に聞き返すと、もう一度聞こえてくる言葉。何故か声が震えているように感じる。
「聖杖が必要かと、思った。血が止まらなくて、少しの間心臓まで止まってた……」
聖杖バルキリー。セティが父親である神父から受け継いだ死者を蘇らせる力を持つ杖。蘇生させるには条件があるようだが、それはわかっていない。
つまり死にかけてた、ということだ。
「……悪ぃ」
流石にアーサーは真面目に謝った。
すると、セティは顔を上げて厳しい目線で真っ直ぐ彼を見据える。
「以前怪我をしたときにも、君はそう言った」
「そう、だったっけ」
「少しは自覚してくれ、アーサー。君の命は君だけのものじゃないんだ」
言われて思い浮かべるのは、幼い時代を過ごした風に愛される大地。そして漸く会えた離れ離れになっていた妹。
「……わかってる」
白が強くなった緑の瞳が伏せられた。
セティは溜息を一つついてから言葉を続けた。
「……今度、動く時は絶対に一回止まること。私もついていく」
「は?」
「『風』を暴走させたらまずい、という自覚があれば、少しは無茶をしなくなるだろうから」
ぽかん、としている彼を見ながら、セティは立ち上がった。
「ティニーやフィーに知らせてくる。二人ともかなり心配してたから、怒られる事は覚悟しておきなよ?」
「……ぐ」
部屋から出つつ言った青年の一言にアーサーは傷が復活したような痛みを覚えた。
そして何と言おうか考えながら、少しずつ全てを思い出していく。
渦巻く風の中で酷く怒っている感情と酷く冷静に敵だけを殲滅していく理性。そのうち両方が消えて行った。
目に何も映ることもなくなって、くらいくらい闇の中。
長い時間を漆黒の中で過ごしていた気がする。
そのまま溶けて消えていくかもしれないと感じた時、金色の光が見えたのだ。
まるで、宵闇に浮かぶ星の様に輝く金色。
それが呼びかけ続けていた。溶けて消えてしまいそうになった時も、引き上げる様にずっと。
間違いなく、あれは側にいた青年のものなのだろう。
「……本当に強いのは、お前かもな。セティ」
部屋の外にまだ立っていたセティはアーサーの呟きを聞いていた。
そして歩き出しながら、青年は口の中で呟いた。
「強いのは君であって私ではないよ。私は……いっそ君をどこかに閉じ込めてしまいたいと考えているんだ」
そうしたら、君は傷つかなくてすむだろう?
決して本人に言えない問を胸に秘めて、セティは宣言通り妹達を呼びに向かった。
Fine.