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2010.3.30 【衝】
Novel stage / Fun Fiction:ととモノ。
《Feeling》
灼熱の溶岩が流れる地下道。
敵を倒した後に残った宝箱の罠の解除に失敗した、と気付いた時にはもうパーティ全員が地下道内部に転移させられていた。
クラッズの少女は手持ちの弓矢をしっかり持って、きょろきょろと周囲を見回した。
「皆、どこ行っちゃったのかな」
見える範囲に仲間は誰もいない。どうやら完全にばらばらのようだ。
「うーん……いけ好かないのはともかく、陽炎ちゃんやユーシェルくんは一人じゃ危ないから合流しなきゃ!」
ほとんど悩むことなく結論を出したユノはぱたぱたと駆け出した。
灯りは持っていないが、炎による仄かな明かりで足下は見えているし、装備品の効果で浮遊している彼女には溶岩の熱は届かない。
まずは扉のない隣の部屋へ。
空から襲い掛かってくる黒い猫に黒い蝙蝠の羽がついた魔物、ねこうもりを射落としながら部屋の隅々まで探す。
「誰かーいないのー?」
叫びながら、引っかこうとする猫だけ白くなった魔物も撃ち落とす。魔物達も数は多いが、何しろ対象は小さい上にすばしっこい。
高い精度と十分な威力を持った弓矢は一体ずつだが確実に数を減らす。
「ここにはいない、かな。つぎぃー!」
周りを見回して人影がいないことを確認すると、彼女は残った魔物から逃げ出した。一気に扉の外まで駆け出すとばたん、と音を立てて閉じる。
その途端、横から強い衝撃を受けた。
「きゃあっ!?」
下がってきた何かにぶつかったユノは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられるところを抱えて止められる。
「なんなのもう!」
「……すまない」
振り回された少女は思わず文句を言うと、抱えた人影が呟く様に謝った。すぐに降ろされた彼女がびっくりして見上げるとそれはパーティメンバーの一人。
「ザクス!?」
「早速だが手伝ってくれ」
「う、うん!」
同級生のフェルパーの少年は敵のドリルが掠めたのか、数箇所に傷を負っている。だが苦痛の表情などまったく見せなかった。
少女は両手にドリルを持つ鎧に向かって弓を引いた。
ぱしゅん、と矢が鎧を貫くと、その姿は掻き消えるようになくなる。
「あと一体っ!」
ザクスもまた残った方へ斬りつけるが止めまでは至らない。更に一撃貰いながら、少年はもう一撃。
更にユノが矢を放つとその鎧もまた消えていった。
「ザクス! 大丈夫なの!?」
「少し、痛い」
ドリルは肩を貫いたようで、肩口が少し抉れている。
「少しなわけないじゃないっ!」
溶岩から離れた石壁にもたれかかる少年を出来る限り支え、少女は自分のリボンを使ってなんとか止血を試みる。
「えっと、えっと……」
先程戦ってきた敵の戦利品を、狩人で得られる能力の一つである超能力で無理矢理鑑定して体力の回復できそうなものを探す。
「ユノ、落ち着け」
「むしろなんでそんなに落ち着いていられるのよっ!」
幸い、いくつか回復魔法の効果がある食べ物があった。
「はい!」
少女はおにぎりを渡す。彼女の懸命さに押されて彼はおにぎりを肩が無事な方の手で受け取って齧る。
とりあえずの応急処置にはなるが、もし再びあの鎧のモンスターに攻撃されればひとたまりもないだろう。
早く回復魔法を扱える仲間と合流しなければ。
「わたし、皆を探してくる。アランくんに会えば回復してもらえるし」
そう言って駆け出そうとするユノの手をザクスが掴んだ。
「待て」
「な、なに?」
壁にもたれて座った少年に見つめられて、そんな状況でもないのに少女の鼓動は僅かに高まる。
「一人では危険だ……向こうに見つけてもらった方がいい」
「で、でも」
「大丈夫だ」
落ち着いた少年の声に少女も落ち着かされる。
「……うん。わかった」
すとん、と腕を引っ張られるままにユノは壁際にしゃがみこんだ。焦燥がなくなったわけではないが、余分な力が抜けていく。
「すぐに合流できる」
「うん……ごめんなさい。焦りすぎてた、わたし」
「いや」
ぽんぽん、と頭を軽く叩かれる。
「気にするな」
危険な地下道の中であることも忘れて、ユノは暖かい気持ちに包まれていた。
その後、合流した仲間達に思いっきりからかわれたことは付け加えておく。
Fine.