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2010.3.22 【日】
Novel stage / Fun Fiction:Fire Emblem 聖戦の系譜
《幼き日の日常》
大人達の言い争う声が頭上を飛び交う。
六公爵家の話し合いにおいて、穏便な会話というものは存在しない。どんなに表面で温和な言葉だとしても、裏側にはどす黒い敵意や嫉妬が渦巻いている。
踊るだけの会議において、爵位を継いだばかりの年若い公爵に発言権はない。また例え言葉を発しても、それは身のない時間に何の影響ももたらす事はないのだ。ただでさえ場違いな子供へは冷たい皮肉が飛んでくるというのに。
そして、進まぬ会議は今日も終わる。
日が暮れた中を馬車が走り、やがて止まる。
「ふぅ……」
ヴェルトマー家の当主は疲れた表情で城へと戻った。父親が自殺し、母親が消えた今、この公爵家を支えるのはもう彼しかいないのだ。
それでも、支えなければならない。
「おかえりなさい、兄様!」
彼よりも幼い子供が戻ってきた青年を迎える。二人の髪と瞳は共に燃える炎の色。ヴェルトマーの炎の血を受け継ぐ者の標だ。
「ただいま、アゼル」
アルヴィスは幼い弟の頭を撫でる。少年は一度嬉しそうに目を閉じ、開くと少し寂しそうに微笑んだ。
「今日もお疲れでしょう。ゆっくり休んでください」
無駄な時間の間、ずっと帰るのを待ち続けていた少年は寂しいのだろう。幼さゆえにその感情がいくら隠していても表れる。
「ああ、でもその前に先日の魔法書の続きを読もうか。アゼル」
アルヴィスがそう言うと、少年はぱあっと嬉しそうな顔になる。しかし慌てながら直にぶんぶんと首を横に振った。
「兄様はお忙しいのですから、ちゃんとお休みするべきです。僕なら」
一生懸命嬉しさを押し殺す弟に、兄は傷ついた振りをしてみせる。
「アゼルは私と共に勉強をするのは嫌いかな?」
「そんなわけありません!」
「では共に読もう。君が力をつけていくのは、私にとっても楽しみなのだよ」
より必死に言い訳をするアゼルの背を押して、アルヴィスは書斎へと歩いていく。
異母弟とはいえ、ただ一人の家族。ただ一人、自分しか守れない弟。
周囲の謗りも知らず、真っ直ぐに信頼の目を向けるアゼルの為に、アルヴィスはこの家を守ることを決めたのだ。
その為ならあの陰湿な会議など、大したことではない。
「兄様、やはりお疲れなのでは……」
「少し考え事をしていただけだ。行こうか」
「……はいっ!」
元気良く返事をした弟を微笑ましく見守りながら、彼はあの会議では決して生じない温かい気持ちに包まれるのを快く感じていた。
Fine.