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2010.3.14 【缶】
Novel stage / original:Abyss of Time ~ After the Nightmare ~
《かん かん かん》
かん、かん、かん。
爪先で蹴って、頭上を越えた缶を踵で蹴り上げて、また爪先で蹴って。
かんっ……かん。
踵で大きく蹴り上げて、くるん、と横に一回転。止まるのと同時に再び爪先で蹴り上げる。
まだ雪の残っている公園には僕以外誰もいない。鳥すら今はいない。
だから、僕の蹴り上げる缶の音だけが響いている。
かん。かん。かん。
前と後、左足で交互に蹴り上げて、たまにくるくる回ってみたりする。
かん……っ。かん。
大きく蹴り上げると、その隙に三回転。今度は爪先で再び受けてみる。
そうして遊んでいると、公園の入口に見慣れた黒いスーツが見えた。
こちらに向かって歩いてくるのを確認して。
かんっ……かん!
一度頭上まで蹴り上げ、縦に回転、サッカーのオーバーヘッドキックのように人影へ缶を蹴り出した。
僕はそのまま軽く着地。振り返ると、人影は飛んできた缶を右手で受け止めていた。
「お帰り、和。話は聞けた?」
何事もなかったように近付いて、僕は和へ声をかける。
「ああ」
すると和もまた何事もなかったように返した。次の瞬間、缶を持ったほうの拳を僕の頭上へ落とす。
「いったーい」
戦闘用に造られた以上、拳骨くらいではそれ程痛くもないけどあえて痛がって見せる。
和は眉一つ動かさなかった。
「危ないだろう」
それだけ言って和は缶を投げる。綺麗な放物線を描いてそれはゴミ箱の中に落ちた。
「……投げるのだって十分に危ない」
金属同士がぶつかるがらがらという音を聞きながら、僕は文句を言った。
「それに、和がここで待てって言ったのに」
事件の関係者に顔を見られない方が僕は自由に動ける。そういう理由で、和は大体の場合において有事の際に駆けつけられそうな場所に置いていく。僕の外見は中学生か高校生くらいにしか見えないこともあって、先入観がなければ早々関係者とはばれない。
「理由は説明した」
「この寒空じゃないといけない理由は説明してない」
振り返って歩いていく和へ更に文句を募らせるが、そのまま歩いていってしまう。
しかたなく僕も小走りに走って追いつくと、コートのポケットに何かを落とされる。
「なに?」
出してみると、袋から出されているカイロ。和はこちらを向かない。
「……ひょっとして、渡し忘れてたとか」
そう呟いてみると。
「戻るぞ」
誤魔化すように和は早足になった。
「あ、待ってよ」
その後を追いかけながら、不機嫌がどこかに飛んで行ったことを僕は自覚していた。
Fine.